乳がん治療後の尊厳を取り戻す医療
乳がんは日本の女性に最も多く見られるがんの一つで、実に9人に1人がこの病に罹患するとされています。治療技術の進展により、乳房再建手術は可能となりましたが、その一方で乳輪や乳頭の再現は後回しにされているのが現状です。そこで注目されているのが乳輪・乳頭のアートメイクです。これは、見た目の回復だけでなく、心のケアとしても重要な役割を果たしています。
医療行為としてのアートメイクの位置付け
乳輪・乳頭アートメイクは厚生労働省によって医療行為として認められているにも関わらず、その実態は広まっていません。多くの乳がん経験者が「選択肢があることを知らなかった」や「タトゥーのようで怖い」といった誤解を抱いています。これが心理的な治療の遅れを招いており、心の健康も脅かしています。
アメリカでは、このアートメイクが保険適用となり、多くの医療機関で保険が適用されるアピアランスケアとして定着しています。治療を受けた女性たちが「再び自分を愛せる社会」を築くための取り組みが進んでおり、日本も同様の環境を整える必要があります。
乾雅人医師の取り組み
銀座アイグラッドクリニックの院長、乾雅人医師は、乳がん治療後の女性たちが抱える心理的な問題について深く理解し、それに応える医療を提供しようとしています。乾医師は、「手術が成功してもそれだけでは足りない」という患者の声からアートメイクの重要性を再認識しました。
アートメイクの施術は、米国の第一人者シェラ・フアレス氏によって確立された医療プロトコルを用いて行われます。医師と看護師が連携し、3D技法を活用して自然な色合いや立体感を再現しています。この施術は単なる美容目的に留まらず、患者が社会に戻るためのケアの一環として捉えています。
社会的な責任
乾医師は、乳がん患者が「選べる医療」として乳輪・乳頭アートメイクを普及させることが、医療者の責任だと強調します。制度の壁を超えて支援を行い、医療現場の改善に貢献することを目指しています。現行の医療制度では、十分な説明が行われていないことが多いですが、乾医師はそれを変えていこうとしています。
2025年のPMU Tokyo Summitへの登壇
乾医師は、2025年11月1日と2日に開催される「PMU Tokyo Summit 2025」で、乳がん患者に選択肢を提供することの重要性をテーマに登壇します。そこでの議論を通じて、乳輪・乳頭アートメイクの普及とその医療的価値について広く発信することを目指しています。
まとめ
日本における医療の現場で、乳がん患者の選択肢を増やし、心のケアをも強化するための取り組みが急務です。乾医師の率いる銀座アイグラッドクリニックは、その灯火となり、制度の壁を越えた選択肢の実現に向けて走り続けています。この新たな医療が、乳がん治療後の女性たちにとって「当たり前の選択肢」となり、尊厳を持って生きるための一助となることを願っています。