低温熱を利用したエネルギーハーベスティングが実現
東京工業大学発のベンチャー企業、elleThermoと旭化成エレクトロニクスが、環境エネルギーを活用する新たな実証実験を実施しました。本実験では、90℃以下の熱を用いてさまざまなデバイスを動かすことを目的としています。
elleThermoが開発している技術は、色素増感型太陽電池の「色素の光励起」を「半導体の熱励起」に変換し発電を行う熱エネルギー変換技術STCです。これにより、環境中の熱を電力へと変換できる可能性が秘められています。
また、旭化成エレクトロニクス(AKM)は、独自の回路技術を駆使して、一次電池を使用しない持続可能なシステムの実現に取り組んでいます。これまで周囲に存在していた微小な環境エネルギーは十分に活用されていませんでしたが、AKMの技術により、「1 μWで起動可能な昇圧回路」と「26 nAの電流で動作する充放電制御回路」をワンチップに搭載したDC/DCコンバーターが開発されました。これにより、環境エネルギーの収集が一歩前進しました。
実証実験の結果
実験では、80℃の恒温槽で2時間以上にわたって電気信号を送信することに成功し、さらに90℃の水中でも発電ができることが確認されました。この成果により、赤色LEDも点灯し、低温熱を使った実用化の可能性が広がってきています。
的確なデータ送信が行える80℃の環境下での実験の様子を映した写真では、STC電圧値を送信中の様子が確認でき、今後の応用に期待が寄せられています。
また、冷却源を使用せずに90℃のお湯の熱でLEDが点灯した事例もあり、今後の技術進展が楽しみです。
今後の展望
今後は、AKMとelleThermoが協力し、AP4470とSTCを活用して、より身近な室温付近の熱エネルギーを電力として利用できるよう研究開発を進める方針です。STCは発電セルを重ねることで出力電圧を増加させることができ、AP4470を利用することで、昇圧機能なしでも動作する電圧監視ICとしての機能も期待されています。
これにより、体温を利用するヘルスケアパッチや、太陽光の届かない場所での物流トラッキングなどの広範な応用が期待されています。
STCとは
やはり、STCの特長は、温度差が無くても発電ができ、室温程度の環境の熱で発電することができる点にあります。この技術は、様々なユースケースに応じた可能性を秘めており、さらなる発展が期待されます。
会社情報
株式会社elleThermoは、資源に依存しない安全で安心なエネルギー問題の解決を目指し、東京工業大学での研究開発を背景に、限られたスペースを有効活用できる安定した発電システムを広めることを目指しています。
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