医療・介護におけるカスタマーハラスメントの現状
医療や介護の現場でのカスタマーハラスメント(カスハラ)に関する相談件数が増加傾向にある中、株式会社ウィ・キャンが発表した『カスタマーハラスメント白書 2025年度版』により、状況の深刻さが浮き彫りになっています。この白書は、2025年度に寄せられた相談をもとに、医療・介護の現場でいかにしてハラスメントが発生しているかを詳細に分析しています。
調査結果の要点
1. 相談の約7割が組織の介入が必要な段階
白書によると、医療・介護関係者からの995件の相談の中で、約68%が「組織の介入が必須」なケースとされています。これは危険度の分類に基づくもので、危険度3(即座に組織の対応が必要)と判断された件数が677件も存在しています。この数字は、現場の負荷が増えていることを示唆しています。
2. 予兆を捉えられない現状
興味深いことに、危険の初期段階に当たる「予兆」に関しては、わずか8%に留まっています。これは、職場環境や業務負担が増大している中で、従業員が問題を早期に認識できていないことを示しています。
3. 実際の対応件数はさらなる増加
実際の対応件数は、危険度3の677件を基に、ハインリッヒの法則に従って算出したところ、現場ではおそらく年間約1万件に達すると推計されています。このため、記録に残らない事案や影響を受けた職員の気持ちが、現場の負担をさらに増大させています。
4. 相談時間の長期化
相談の平均時間は27.3分。中には、相談が30分を超えるケースが全体の38%を占めており、これも明らかに現場の負担の重さを物語っています。時間がかかる相談は、既に問題が深刻化していることを示しています。
5. 行為者の特徴
相談において特定できた行為者の50%は利用者本人であり、残りは利用者の家族が占めています。発生場所の約4割は医療機関の施設内、さらに約3割は訪問先という密閉された空間で起こることが多い点も見逃せません。
6. 問題の根源
カスハラの行為を分類した結果、最も多いのは「契約外要求」に関するもので、これが34%を占めています。暴言や不当要求だけを対処しても、背後に存在する構造が変わらなければ、再発は避けられません。実質的な対策には、行為のした理由を探る必要があります。
無償公開の意義
ウィ・キャンの濱川博招代表取締役は、「カスタマーハラスメントは医療・介護の分野だけの問題ではない」と述べています。多くの業界や社会全体に共通した課題であるこの問題について、広く認知されれば対策の質が向上し、実際の現場も改善されるだろうと期待されています。
まとめ
この白書は、医療・介護関係者だけでなく、企業や地域におけるカスハラ対策のための貴重な情報源となります。また、2026年10月からは法的義務化が迫っており、企業や医療機関は早急に体制を整える必要があります。この問題に対処するためには、事態の早期認識と適切な対策が不可欠です。制度化が進む中、現場の実態を共有し、より良い医療・介護を提供していくことが求められています。