マイマイツツハナバチの新たな農業利用
近畿大学農学部の香取郁夫准教授と筑波大学の横井智之助教が共同で行った研究により、カタツムリの空き殻を巣材とする「マイマイツツハナバチ」の生態が解明され、農業現場での授粉昆虫としての利用が期待されています。この研究の結果は、2025年4月に昆虫専門誌『Insects』に掲載される予定です。
マイマイツツハナバチとは?
マイマイツツハナバチはミツバチに属する一種で、特にカタツムリの空き殻に巣を作ることで知られています。この研究では、彼らが好む空き殻の種類や巣作りに適した環境を詳しく調査しました。さらに、3Dプリンターを使用して作成したプラスチック製の人工殻にも巣を作ることが確認され、これがマイマイツツハナバチの農業利用を加速するでしょう。
研究の背景と目的
農業では昆虫を利用した授粉が一般的です。特に、セイヨウミツバチは多くの作物で使われていますが、特定の植物に対して授粉効率が低い場合や、生態系への影響が懸念されています。そのため、日本の在来種を通じて、より多様な授粉昆虫を利用するための研究が急務となっています。今回注目されたマイマイツツハナバチは、自然界で唯一カタツムリの空き殻を巣材とするハナバチであり、これまで農業利用されることはほとんどありませんでした。
研究の実施内容
研究チームは3つの実験を行い、マイマイツツハナバチの生態と農業利用の可能性を探りました。
1.
営巣環境の好み:4種類のカタツムリの殻を異なる環境に設置し、それぞれどの殻を選び、どのような場所で巣を作るのかを観察しました。その結果、クチベニマイマイの殻が特に好まれ、草地での営巣が好まれることが確認されました。
2.
授粉効率の比較:イチゴの花を利用して、マイマイツツハナバチの授粉効率をセイヨウミツバチと比較しました。結果として、両者の授粉効率は同等かそれ以上であることがわかりました。
3.
人工巣材の開発:クチベニマイマイの殻をCTスキャンし、プラスチック製の人工殻を作製しました。これらの人工殻を用いたところ、天然の殻と同等の営巣率が得られ、普通のカタツムリの空き殻の代替として効果的であることが示されました。
研究の意義と今後の展望
この研究は、マイマイツツハナバチの生態を明らかにし、農業でのポリネーターとしての応用可能性を確認する重要な成果をはらんでいます。将来的には、環境に優しい生分解性材料を用いた人工巣を開発し、マイマイツツハナバチの有効性をさらに引き出すことが目指されています。このようにして、農業の安定した生産が実現することが期待されています。
参考文献
研究者のメッセージ
香取郁夫准教授は、マイマイツツハナバチの農業利用が進むことで、セイヨウミツバチ依存から脱却し、日本の在来種を用いた持続可能な農業の実現に寄与することを願っています。