胃の病原菌NHPHの実態調査
近年、ヘリコバクター属の中でもピロリ菌以外の「NHPH」と呼ばれる菌が注目されています。日本ではピロリ菌の感染率は低下傾向にあるものの、H. suisといったNHPHが感染し、胃マルトリンパ腫や消化性潰瘍の原因になることが次第に明らかになってきました。このNHPHの感染率やその特徴を解明するため、日本ヘリコバクター学会は新たな研究を進めてきました。
調査の背景
日本では、H. suisなどのNHPHが人間の胃に感染する事が分かってきました。これを立証するためには、実態調査が必要です。そこで、杏林大学の徳永教授を筆頭とした研究チームが、人間ドックを受診した673名を対象に、NHPH感染の実態を調査しました。この研究は2022年4月から2023年2月まで日本の4つの病院で行われました。
調査の手法
調査では、内視鏡検査を通じて胃液からDNAを抽出し、リアルタイムPCR法でNHPHの存在を確認。これにより、NHPHの感染率が3.0%で、その内訳として70%がH. suisによるものであることがわかりました。外因として、内視鏡結果を総合的に評価し、例えば食事歴やペット飼育についても調査を進めました。
NHPH感染の特性
調査結果によれば、NHPH感染患者は全例胃炎を発症し、ピロリ菌による感染よりもその範囲が狭いことが明らかになりました。特にH. suis感染者では、霜降り状の胃の所見やひび割れが93%の患者に認められました。
臨床的な意義
H. suis感染者は全員男性で、豚のホルモンを食べた経験があることが特徴として挙げられました。この研究を通して、血清学的診断方法(ELISA)がH. suis感染の診断法として有用だと、臨床的にも支持されました。
まとめ
ピロリ菌の感染率が低下する中、NHPHも病原体として無視できない存在になりつつあります。今後、NHPH関連の疾患やその治療法の確立に向けた研究が期待されています。また、感染防止の基本として、豚ホルモンの調理法やペットとの接触後の手洗いが重要であることも強調されます。
この研究を通じて、今後はNHPHが我々の健康にどのような影響を与えるかが焦点となるでしょう。