はじめに
近年、集中豪雨による内水氾濫が日本各地で頻発し、排水能力を超える降雨によって浸水被害が急増しています。茨城県取手市双葉地区においても、2023年6月に豪雨による大規模な内水氾濫が発生しました。この事例を受け、NTTコムウェアとNTTコミュニケーションズは、技術の力でこの問題に対処しようと、AIを活用した水位予測モデルの実証実験を実施しました。
内水氾濫の背景
日本では、過去10年間に内水氾濫による浸水被害が全浸水の68%を占め、多くの地域で深刻な影響を与えています。特に小規模水路は急激な水位変動が起こりやすく、早急な対策が求められています。この状況を改善するためには、もっと迅速かつ正確な水位予測が必要です。
実証実験の概要
本実証実験では、小規模水路に特化した水位予測モデルを構築しました。実験に用いたデータは2024年5月から11月にかけて取得したもので、過去の水位データを分析し、AIのモデルに組み込むことで、実土壌の状況が考慮される予測システムを開発しました。目標は、事前に浸水のリスクを評価し、防災措置を講じることです。
防災担当者のニーズ
防災担当者が効果的に事前対策を行うためには、短時間での水位予測が必要です。実証実験では、気象庁からの予報情報や現場の排水機の稼働状況などを考慮し、5分間隔で3時間先までの水位を正確に予測することを目指しました。また、緊急事態に備え、最大で6時間先の予測も行えるモデルにしています。
予測結果の活用
実証実験によって、予測された水位は実際の水位変動と一致し、有効性が確認されました。特に、急激な水位上昇が予測される場合には、事前に排水機を稼働させたり、国土交通省への応援要請を行うなどの措置が考慮されます。また、越水が懸念される場合には、住民への避難指示を事前に発令し、避難所の開設や誘導を行うことも可能です。
今後の展望
今回の実証実験は、NTTコムウェアとNTTコミュニケーションズによる共同の取り組みです。両社は、得られた知見を活かし、今後、全国的に信頼性の高い水位予測ソリューションの提供を検討しています。この技術が地域防災力の強化に繋がることを目指し、引き続き水害対策に寄与していく予定です。
終わりに
AIを活用した水位予測モデルは、地域住民の安全を守るための新たな技術としての可能性を秘めています。今後も技術の進化と共に、効果的な防災対策が推進されることを期待しています。