アジア太平洋地域の商業用不動産投資の現状
最近、MSCIが発表した「Asia Pacific Capital Trends」レポートによると、アジア太平洋地域の商業不動産における投資活動が低迷しており、2024年第2四半期も厳しい状況が続いていることが示されています。特に、取引額は前年と比べて大きく減少し、地域全体での成長の兆しが見えにくくなっています。
取引額の減少
2024年の第2四半期に完了した商業不動産取引の総額は、前年同時期に比べ17%減の324億ドルとなっています。この結果、2024年の上半期における不動産売却活動は、2023年上期と比べて7%減少し、704億ドルにとどまりました。特に、日本の投資環境はマクロ経済の不安定さから減速が見られ、取引が活発なホテルセクターにおいても厳しい状況が続いているようです。
市場別トレンドの違い
MSCIのアジア地域担当者であるベンジャミン・チョウ氏は、日本における投資活動が2024年中頃から低下し始めたことについて触れています。これは、日銀による利上げの懸念が影響しているとされており、特にホテルなどの資産クラスにおいてのリターンが重要な要素になっているとのことです。また、APAC全体では、国内資本による投資がグローバル資本に比べて安定していることも注目されています。
セクター別の動向
第2四半期における主要セクターの動向を見ると、ホテルセクターだけがAPAC全体で取引額が増加しています。一方、オフィス投資は8四半期連続で前年を下回っており、工業用不動産も日本と中国の市場が影響し、30%以上の減少を記録しました。このような中、リテールセクターは65億ドルの取引額、通年では145億ドルに達しましたが、売却される大型ショッピングセンターも見られました。
国別の situazione
中国
中国においては、前年同時期と比較して19%減の82億ドルの投資額となりました。特に工業用不動産は、テナントの需要の落ち込みから四半期ベースでも最低の113億人民元(約16億ドル)にまで減少しました。しかし、マルチファミリー市場は引き続き注目されており、国際的な投資家による強い関心が伺えます。
日本
日本では、2024年第1四半期の売上が高水準を記録したものの、7月の利上げ期待が伝統的な不動産セクターに影響を及ぼしています。ホテルセクターは特に好調で、東京では取引額が101億ドルに達し、アジア太平洋地域で最も取引が活発な都市の座を維持しています。大阪もホテルセクターの推進で過去最高の取引活動を記録しました。
香港
香港では、商業用不動産の価格が高騰し続け、リテールと工業用不動産が特に顕著な影響を受けています。一方で、賃貸住宅の取引は活発を維持しており、大学に購入されたホテルもありました。
シンガポールと韓国
シンガポールの第2四半期は取引が低迷し、オフィスセクターの大幅な後退が見られます。韓国では、一部のセクターにおいて取引活動が増え、オフィスおよび工業用セクターの取引活動が前年を上回る水準に回復しています。
まとめ
アジア太平洋地域の商業用不動産は今後も厳しい局面を迎えることが予測されます。ただし、一部地区の動向やセクターでは回復の兆しが垣間見えるため、今後の市場の変化に注目が集まります。