富士通と横浜国立大学による最先端の気象シミュレーション
日本の気象研究に新たな一歩を刻むべく、富士通と国立大学法人横浜国立大学が共同で取り組んできた研究が、台風に伴う竜巻予測の分野で革新的な成果をあげました。スーパーコンピュータ「富岳」を利用して、これまで困難とされていた気象シミュレーションの実現に成功したのです。この技術は、いかにして台風と竜巻の予測を可能にしたのか。その詳細をお伝えします。
背景
日本は台風が頻発し、その影響で竜巻が発生することもあります。実際、国内の竜巻の約20%が台風に伴って発生しています。しかし、竜巻の発生を正確に予測することは非常に難しい問題で、特に台風との相互作用に関してはこれまでも解決されていない課題がありました。 このプロジェクトは、2018年から続いており、2022年11月より本格的に共同研究を推進してきた成果と言えます。
技術のポイント
従来の気象シミュレーション技術では、広範囲にわたる台風の動きと、局所的な竜巻の生成を同時に解析することができませんでした。このため、台風全体を高精度で予測する必要があり、計算に要する時間が膨大になることが問題となっていました。
富士通と横浜国立大学は、大規模並列処理技術を駆使し、CReSS(Cloud Resolving Storm Simulator)を「富岳」上で最適化しました。この新しいシミュレーションにより、台風の発生から数時間後に予想される竜巻の発生を、旧来の約11時間という計算時間から80分にまで短縮することに成功しました。
具体的な成果
2024年8月、九州地方で発生した台風10号に関する予測実験では、「富岳」の8,192ノード上でCReSSを使ってシミュレーションが行われました。その結果、気温や気圧、湿度、風向きなどのデータを元に、竜巻の発生が明確に再現されました。特に、九州東岸で発生した多数の竜巻が具体的にシミュレーションによって確認され、これまでの予測技術においては実現不可能だったことが明らかになりました。
未来への展望
今後、富士通と横浜国立大学は、今回の研究成果を広く研究コミュニティに公開する計画を進めています。また、AI技術を活用してさらなる予測精度の向上も目指しています。この新技術は、自然災害による被害を減少させるための重要な一歩となることでしょう。
研究者たちのコメント
“台風に関連した竜巻という難しい現象を予測できるようになったことは画期的な成果です。これにより、より迅速で正確な気象警報を発信できる体制が整うことが期待されます。”と、研究の責任者である坪木和久教授は述べています。さらに、富士通の岡本青史執行役員も、共同研究の成果が気象災害の対策に大きく貢献することを強調しています。
結論
台風に伴う竜巻予測の世界初の実現は、気象学の新たなブレイクスルーと評価されるべきです。これにより、将来的には、より安全な社会を築くための信頼性の高い気象情報の提供が期待されます。今後の進展が待たれます。