ヒマラヤを5000㎞踏破、日本山岳会が新たな歴史を刻むプロジェクト
2020年からスタートした「グレート・ヒマラヤ・トラバースプロジェクト」では、日本山岳会のメンバーがヒマラヤ・カラコルム山脈を約5,000kmにわたって踏査しました。この壮大な挑戦は、登山の歴史を辿りながら、未来への新たな道を切り開くものであり、2023年8月にその全行程を無事に完了しました。
プロジェクトの概要
このプロジェクトはネパールのカンチェンジュンガ山麓から始まり、インド、パキスタンを横断してK2エリアへと続く長大なトレイルを探検するものでした。隊員たちはこの旅の中で、標高8,000mを越える14座の山々を巡り、高度5,000m以上の険しい峠を多数越えました。それだけでなく、氷河や人々の生活圏を訪れ、自然と文化の両面から多くのことを学びました。
年表に見るプロジェクト
このプロジェクトは計7期にわたる活動に分かれており、各期で異なる地域を探索しました。特に第3期にはクーンブ、ロールワリンといった地域を訪れ、第2期では氷河湖の決壊に対する研究も行いました。コロナ禍による中断もありましたが、重廣恒夫隊長を中心とするチームは、約400日間に及ぶ踏査を経て全行程を完了しました。
重要な知見とその影響
この壮大な旅を通じて、隊員たちは様々な貴重な知識を得ることができました。すでに日本の登山史に名を刻んだ先人たちの足跡を辿ることで、彼らの偉業を直接肌で感じることができたのです。また、気候変動の影響により、ヒマラヤ山脈での氷河の後退や氷河湖の決壊が進んでいることを目の当たりにし、地球温暖化が自然環境に与える深刻さを実感しました。
さらに、開発が進む山奥や国境地帯での社会情勢の変化にも触れることができ、登山が単一の冒険に留まらないことを再認識しました。
将来に向けて
本プロジェクトの成果は、今後のヒマラヤ登山のあり方を考える貴重な一歩となります。得られた知識や経験は、次世代の登山者にとっても大いに役立つことでしょう。
山岳信仰、登山文化、そして自然環境の変化について新しい視点を提供し、後続の探検者たちが未来にどのようにヒマラヤと向き合っていくのか、注目が集まります。これからも日本山岳会の活動に引き続き期待が高まります。