糖鎖合成酵素の新知見
2025-10-31 13:50:54

がん化に関与する糖鎖合成酵素の選択メカニズム解明

糖鎖合成酵素の選択的な働きについての新しい発見



岐阜大学糖鎖生命コア研究所の木塚康彦教授とその研究チームは、がんや自己免疫疾患に関連する糖鎖を合成する酵素GnT-Vについての重要な知見を発表しました。この研究は、大阪大学、広島大学、熊本大学、藤田医科大学と共同で行われました。

研究の背景



糖鎖は、グルコースなどの単糖が結合してできる物質で、動物の体内では多くのタンパク質に付加されています。糖鎖の構造はタンパク質ごとに異なり、健康と病気の状態で形状が変わることが多いです。特に、疾患の診断にも活用されるため、それを形成する糖鎖合成酵素の働きについての理解が求められています。

GnT-Vの役割



GnT-V(N-acetylglucosaminyltransferase V)は、特にがんの悪性化に関与する糖鎖の枝分かれ構造を形成する酵素として知られています。例えば、GnT-Vが作用することで、糖鎖はより複雑な形になり、細胞の機能や疾患の進展に影響を及ぼします。

研究の目的



本研究の目的は、GnT-Vが生体内でどのように糖鎖を付けるタンパク質を選択するのか、そのメカニズムを解明することです。これにより、糖鎖合成の仕組みが明らかになり、がんや自己免疫疾患の理解が深まることが期待されます。

研究の手法



研究では、マウスの腎臓を用いて、GnT-Vが糖鎖をどのように付加するタンパク質を選ぶのかを調査しました。研究者たちは、GnT-Vが主に腎臓に存在する2つのタンパク質、ANPEPおよびMeprinαに糖鎖を付けることを突き止めました。

糖鎖の付加メカニズム



GnT-Vの選択的な作用は、各タンパク質の立体構造およびその細胞内通路に依存することがわかりました。試験では、GnT-Vが2つのタンパク質のC末端近くの糖鎖に集中して作用すること、そしてそのアクセスが立体構造によって容易になる点が明らかになりました。

結果と意義



この研究の結果、GnT-Vは糖タンパク質の細胞内での輸送経路と、タンパク質立体構造の双方に依存して糖鎖を付加することが確認されました。これは、糖鎖合成過程を制御する新たなメカニズムを示唆しており、今後、がんや自己免疫疾患の研究に大きく寄与するものと考えられます。特に、糖鎖の変化が引き起こす疾患の治療に向けて、糖転移酵素を標的としたアプローチが進むことが期待されます。

今後の展望



本研究はGnT-Vの選択メカニズムを初めて明らかにした重要な成果です。今後、他の糖転移酵素のメカニズムも解明され、糖鎖の形状変化が疾患に与える影響の理解が進むことが期待されます。また、糖鎖の異常がもたらす病気に対して、糖転移酵素をターゲットにする新たな治療法の開発が進められるでしょう。これにより、がんなどの疾患の早期発見や治療の可能性が広がります。

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本研究成果は、2025年10月28日にiScience誌にて公開されました。今後の研究にますます注目が集まります。


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