がん集学財団と杏林大学の共同研究
公益財団法人がん集学的治療研究財団(以下、がん集学財団)と杏林大学医学部乳腺外科の井本滋教授が、この度「乳癌の原発部位から転移・再発部位におけるHER2発現のダイナミクスを解析する多機関共同後向きコホート研究」(通称:HER2 PRIME study, JFMC52-2401-N1/ENH-DS-24005)を開始したことを発表しました。この研究は、乳癌患者の治療における重要なバイオマーカーであるHER2に焦点を当てています。
研究の背景と目的
HER2は、乳癌の治療戦略を立てるうえで非常に重要な役割を持っていますが、原発腫瘍と転移・再発腫瘍では、そのHER2のスコアが変化することが知られています。この研究では、同一患者から得られた原発部分と転移再発部分の腫瘍組織を収集し、HER2スコアリングを行います。さらに、臨床上の背景因子や予後との関係性も解析し、HER2の変動を理解することを目指しています。また、遺伝子プロファイリングやタンパク質発現解析を通じて、HER2の変化に関わる要因を分子レベルでも検討する予定です。
井本教授は、「HER2陽性の乳癌に対する薬剤の効果を高めることで、治療効果を上げてきました。そのうちの一つ、トラスツマブデルクステカン(T-DXd)は、従来効果がないとされていたHER2低発現の乳癌に対しても可能性を示しています。したがって、HER2の発現量とその変動を捉えることは非常に重要です」とコメントしています。
がん集学財団の役割
がん集学財団はこの共同研究において様々な支援を行います。まず、参加する施設が倫理に則り円滑に研究を進められるように、事務局業務を担います。また、統計解析を行うことでHER2発現のダイナミクスを明らかにし、その成果は学術的な発表に活用される予定です。
今後の展望
本研究は2025年3月に症例登録を開始し、2026年末までには解析を完了する見込みです。その結果は国内外の学会や学術誌に発表され、乳癌治療の進展に寄与すると期待されています。今回の共同研究は、乳癌という病に対する新たな理解を促進し、患者の治療選択肢を広げる一助となるかもしれません。
がん集学財団について
がん集学財団は、昭和55年に設立され、がん治療の研究を進めるために多岐にわたる事業を展開しています。具体的には、臨床試験の推進や研究助成、データベースの構築、医療機器の開発支援などを行い、より良い治療法の確立を目指しています。詳細情報や問い合わせは、
がん集学財団の公式サイトを訪れてご確認ください。