株式会社東レリサーチセンターの新たな試み
株式会社東レリサーチセンター(TRC)は、東京都中央区に本社を置く企業であり、材料工学の分野での革新を目的に、湿度および酸素濃度を同時に制御した加熱発生ガス分析サービスの提供を開始しました。このサービスは、温度だけでなく湿度や酸素濃度といった環境要因が加熱時のガス挙動に大きな影響を与えることを考慮し、安定した分析を可能にするためのものです。
湿度と酸素の影響
これまでの研究において、加熱によって発生するガスの分析は主に温度に依存していましたが、湿度や酸素濃度も重要な要素とされています。特に、湿度の変化は質量分析計の検出安定性に大きく影響を及ぼし、酸素が存在する環境下では反応制御が難しくなることが明らかになっています。このことが、両者を同時に制御した分析が難しかった理由の一つです。
TRCの独自技術
TRCは、この技術的な課題を克服するために、独自の雰囲気制御技術を開発し、TPD-MS(Temperature Programmed Desorption Mass Spectrometry)に統合しました。これにより、湿度と酸素濃度を精密に制御することができるようになり、実際の使用環境を模擬した分析が可能になりました。
実際の測定では、特に蓄電材料分野での応用が期待されています。充放電に伴う発熱や、外部環境が材料に与える影響が大きく変化するため、これらを考慮した分析が求められています。加熱発生ガスの分析により、材料劣化の兆候を把握し、安全性リスクを推定することができるため、より高度な安全設計が可能になります。
適用範囲
加熱発生ガス分析サービスは、蓄電材料にとどまらず、電子部材、複合材料、樹脂、接着剤など幅広い分野に適用可能です。異なる材料での評価を行うことで、設計段階における安全設計の高度化や、評価期間の短縮が実現できると考えられています。
具体的な事例
TRCが行った分析の一例として、全固体電池用の硫化物系電解質の挙動を考察したところ、相対湿度を0%(乾燥条件)と約40%の条件で比較しました。この結果から、湿度が存在する際には、低温域において人体や環境に影響を及ぼす可能性のある硫化水素が微量発生することが確認されました。このように、湿度の有無によるガスの発生挙動と高温域での熱分解生成物の違いが、TRCの技術によって分析できるようになりました。
未来の展望
TRCは、蓄電材料分野だけでなく、さまざまな材料への応用を考えており、加熱発生ガス分析の長年にわたる知見を活かし、目的に応じた最適な条件の提案や独自の測定手法の開発を進めています。これにより、先端材料の開発支援と共に、さまざまな課題の解決に寄与していく予定です。
用語解説
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TPD‑MS(Temperature Programmed Desorption Mass Spectrometry): 温度制御付き加熱装置に質量分析計を直結し、加熱時に試料から発生する気体の質量数ごとの濃度変化を追跡する手法。定性的な分析に加え、標準ガスを使用することで発生ガスの定量も可能です。