新たな分子メカニズム
2024-10-23 20:30:23

脳内炎症と統合失調症を結ぶ新しい分子メカニズムの発見

脳内炎症と統合失調症を結ぶ新しい分子メカニズムの発見



研究の背景



統合失調症は、幻覚や妄想、意欲の低下、認知機能障害など、様々な精神症状を引き起こす病気であり、発症率は約100人に1人という高い数字を示しています。この病気には根本的な治療法が存在せず、患者は長期にわたる薬物治療や入院を余儀なくされることが多く、その負担は非常に大きいです。近年、脳内の炎症がこの病気の発症に関連している可能性が取り上げられていますが、そのメカニズムはまだ十分に解明されていません。

新たな発見



国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市)の宮本洋一主任研究員を中心とする研究チームが、脳内炎症と統合失調症に関連する新たな分子を発見しました。今回の研究では、Importin α4(Kpna4)という核輸送分子が、脳内炎症や精神疾患様の行動異常に関与していることを示しました。

使用されたのは、Importin α4遺伝子を欠損した(KO)マウスで、これが不安や社会性の低下、プレパルス抑制障害といった、統合失調症の特性に似た行動異常を示すことが分かりました。さらに、その原因として、Importin α4の核輸送機能ではなく、遺伝子発現を制御するクロマチン機能の不全が脳内炎症を引き起こしていることが明らかにされました。

研究の意義



この発見は、Importin α4が脳内炎症と統合失調症を結びつける重要な分子であることを示す画期的なものです。マウス実験によって、研究チームは統合失調症に対する新たな治療法の開発が期待できるモデルを提供しました。今後の研究では、Importin α4を標的とした治療薬の開発が進む可能性が高まっています。

今後の研究方向性



研究は、2024年10月8日に「Translational Psychiatry」にて発表される予定です。この成果をもとに、さらなる疫学研究や臨床試験が行われ、より深い理解が進むことが期待されます。特に、Importin α4の機能を探ることで、脳内炎症の制御や統合失調症の新たなアプローチが見えてくるでしょう。

研究支援



この研究は、日本学術振興会やAMEDなどの支援を受けて行われました。研究者たちは、今後もImportin α4に関する研究を深化させ、心の健康への貢献を目指します。

結論



統合失調症は、現代の医学において未解明の領域が多い疾患です。しかし、新たに発見されたImportin α4は、脳内炎症との関連性を明らかにし、今後の治療法開発への道を拓く重要なステップとなることでしょう。エビデンスに基づく新たな治療法の実現を期待しましょう。


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会社情報

会社名
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
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大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目6番8号大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目6番8号
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072-641-9832

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