多拠点生活がもたらす新しい可能性
都市の喧騒に疲れを感じている現代人にとって、多拠点生活は新たな選択肢の一つとして注目を浴びています。この度、東京大学大学院農学生命科学研究科と日鉄興和不動産、株式会社SANU、株式会社JDSCの4者が共同で行う産学連携の研究が新たに始動しました。目的は、都市と自然を行き来する多拠点生活がウェルビーイングに及ぼす影響を検証することです。
研究開始の背景
都市生活の中では、仕事や家事、育児に追われ、心身をリフレッシュすることが困難になっています。しかし、リモートワークの普及により、複数の拠点を持って生活するスタイルが浸透しつつあります。国土交通省の調査によると、都市居住者の3割以上が二地域居住に関心を示しており、都市と地方の二地域居住を実行する層が増加中です。しかしながら、この生活スタイルが心身にどのような影響をもたらすかについては、十分な理解がないのが現状です。
これまでの研究から見えた傾向
本研究は、日鉄興和不動産、SANU、JDSCが2025年から行っていた探索的調査を基にしています。調査では、多拠点生活の利用者に心身の変化が見えてきたとのことです。今回の研究では、都市生活者全般を対象に比較を行い、多拠点生活がもたらす変化の要因を明確にすることを目指します。
研究者は、同じ人を1年間追跡し、変化が「多拠点生活を選ぶ人々の特性」によるものなのか、「多拠点生活の経験」によるものなのかを切り分けながら検証していく予定です。
多拠点居住が与える心身への影響
先行研究では、以下のような3つの兆しが見えてきました。
1.
心身の自己認識の向上:多拠点生活を行うことで、滞在中の自己評定が高まり、帰宅してからもこれが続く可能性があります。
2.
帰る場所の認識の変化:多拠点が旅先ではなく「戻ってくる場所」に感じ始める傾向があるようです。このことは、訪れるたびに居心地が良くなることを示唆しています。
3.
自然との距離感の変化:多拠点生活を送りながら自然とより密接に関わることで、帰った後の生活や家族との関係にも変化が生じる可能性があります。
第2フェーズの研究計画
今後は、一般的な多拠点生活者を対象にした比較研究を行い、約800名規模での調査を予定しています。また、同一の対象者を長期間にわたって追跡することで、意識や行動の変化を詳細に分析していきます。
データに基づく実証的なアプローチで、多拠点生活を選ぶ人々の特性や自然環境がどのように影響を与えるかが明らかになることが期待されています。
研究が目指すもの
この研究を通して、家に対する弊害やストレスを軽減し、各自にとっての新たな生活スタイルの選択肢を提示しようとしているのです。特に、自然環境での生活がいかにウェルビーイングを向上させるかを科学的に明らかにし、持続可能なライフスタイルの形成に寄与したいと考えています。
最後に
この研究の成果は、研究者や自治体、企業などに広く公開され、持続可能なライフスタイルモデルの社会実装へと繋がっていく予定です。今後の展開が楽しみです。