AIによる培養制御進化、味の素と共同で成果を上げるちとせ研究所の挑戦

ちとせ研究所のAI技術が切り開く新境地

株式会社ちとせ研究所（以下、ちとせ）は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構（以下、NEDO）と共に、新たなバイオ製品の生産技術の開発に取り組んでいます。特に、ちとせが開発したAI自動培養制御システムが最近、味の素株式会社（以下、味の素社）との共同研究において、革新的な成果を達成しました。糸状菌の難しい培養環境において、AI制御が生産性を2倍に向上させたのです。

人間の限界を超えたAIの力

微生物の発酵生産における培養状態は、開始から終了まで様々な変化を遂げ、常に最適化された条件を維持する必要があります。これまで、培養環境における温度やpHなどの調整は、専門知識を有する技術者の経験に基づく固定的なものでした。しかし、ちとせのAIは、培養状態の変化をリアルタイムでモニタリングし、必要に応じて培養条件を動的に調整することが可能です。この精密制御が、今回の成功の鍵となりました。

糸状菌培養の課題に立ち向かう

研究対象として選ばれた糸状菌は、他の微生物と異なり、菌糸と呼ばれる構造が長くて複雑なため、培養状況を把握することが非常に難しい特性を持っています。ちとせのAIは、この複雑な状況において、センシング技術を駆使して培養状態を正確に捉えることで、菌株の潜在能力を最大限に引き出しました。このような革新的なアプローチにより、従来の人間設計の条件を大幅に上回る生産性を実現しました。

精密制御による新たな展望

発酵プロセスでは、一般的に温度・pH・栄養供給速度の3つの制御項目が重要視されています。ちとせのAIは、これらの項目を従来の固定状態から動的制御へと移行させることに成功しました。この手法は、特別な装置を必要とせず、既存の資源を最大限に活用するもので、産業全体に対し新たな生産プロセスの開発を可能にします。

ラボから生産現場への架け橋

さらに、NEDOが進める「バイオものづくり革命推進事業」において、このAI制御技術が今後のたんぱく質生産プロセスに利用されることが見込まれています。特にラボスケールと生産スケールの環境差を乗り越え、データを一元管理することで、製造と研究のプロセスを一体化させる新たな基盤の構築が期待されています。これは、バイオものづくりの革新を促進する大きなステップです。

未来への挑戦

株式会社ちとせ研究所は、今後もAI技術を駆使した培養プロセスの開発を継続し、バイオテクノロジー分野において更なる革新を目指します。環境保護と持続可能な生産の両立という社会的使命のもと、ちとせはバイオエコノミーの未来を切り開いていくでしょう。私たちが新たに目にする未来は、ちとせの技術によって維持されるかもしれません。実際、味の素社のアプローチも、この技術の発展によって支えられるでしょう。

このように、ちとせの研究は単なる技術革新にとどまらず、人類全体に寄与する可能性を秘めています。彼らの挑戦がどのような成果を生むのか、今後の展開から目が離せません。