第11回気候変動リスク評価懇談会が示す最新の課題

第11回気候変動リスク評価懇談会の概要



令和6年6月10日、オンラインで第11回「気候変動リスク・機会の評価等に向けたシナリオ・データ関係機関懇談会」が開催されました。本懇談会は、気候変動がもたらすリスクと機会の評価を深めるために、さまざまな金融機関や関係省庁が集まり、情報交換と議論を行う場です。

会の目的と参加者の意義


出席者には、三井住友銀行や日清食品ホールディングスなどの企業から、また金融庁、文部科学省、農林水産省などの関係省庁からも多くの方々が参加しました。このような多様な視点を持つ参加者が集まることで、気候変動に関するデータやシナリオの理解が深まり、より具体的な施策やアプローチが模索されると期待されています。

議題と主要な議論


1. データの取り扱いの課題


企業側からの意見として、提示されるデータが単なるリストであれば、実用化が難しいという声が上がりました。特に、気候変動シナリオの分析に利用できるデータを簡単に探し出せないことが障害になっているとのことです。このため、政府やデータプラットフォームに対して、コンシェルジュやAIのような機能を求める声が強まりました。データの組み合わせや分析方法に関する具体的なヒントも提供してほしいとの要望がありました。

2. データの多様性と標準化


参加者たちは、気候関連データの種類が非常に多く、それぞれの算出機関によって数値が異なるという点を指摘しました。このため、データの比較や組み合わせ方にない明確な基準が欠けていることが課題となっています。サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の草案が発表されており、これが今後、シナリオ分析や開示にどのように影響を与えるのかも議論されています。

3. 研究者との連携の重要性


国立環境研究所は、実際の事業者との取り組み事例を文書化し、過去の知見を広く周知する重要性を認識していますが、気候変動における物理的リスクの評価に関しては、研究者と企業界の連携が不可欠であることが強調されました。また、国土交通省からは、TCFD (気候関連財務情報開示タスクフォース) 提言に基づく物理的リスク評価の手引きが今後重要になってくるとの見解が示されました。

4. 漁業への影響の分析


漁業分野においては、気温上昇や海面上昇が漁獲量や収入に与える影響を明確にするためのシナリオ分析が必要であるとされています。しかし、気候観測データと事業関連データの組み合わせや変換は難しいため、さらなるデータ取得の促進が求められています。また、環境省では漁業資源の将来予測に取り組んでいますが、その難易度の高さが明らかになっています。

これらの議論から、気候変動に対応するためには、データの整理や提供方法の改革が急務であることが浮き彫りになりました。この懇談会を通じて、企業や研究者、政府が協力し合い、より実用的な気候変動リスクの評価手法の確立に向けた動きが進むことが期待されています。

結論


第11回気候変動リスク評価懇談会は、気候変動に対する様々な意見や情報の交換が行われ、今後の課題が明らかになりました。企業や研究機関が連携し、確かなデータをもとに実用的なリスク評価を行うことで、持続可能な社会に向けた一歩を踏み出していく必要があります。

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