長崎大学病院の画期的な研究成果
2025年11月、東京で開催された日本肺癌学会学術集会において、長崎大学病院の研究チームは、プラスマン合同会社が提供するAIシステム「Plus.Lung.Nodule」の臨床研究成果を発表しました。今回の研究は、低線量CTを使用した肺がん検診におけるAIの活用が、医療画像診断の精度をどれほど向上させるかを示すものであり、特に興味深い結果が得られました。
研究の概要
この研究では、75件の低線量CT画像が評価され、9名の読影医(専門医4名、非専門医5名)が解析に参加しました。結果として、AIを用いた読影時に全体の検出感度が大幅に向上したことが確認されています。具体的には、症例ごとの感度は87.8%から93.8%に、結節ごとの感度は52.3%から73.8%へと改善され、相対的な改善率は41%に達しました。これらの数値は、AIのサポートが読影医の診断精度にもたらす影響を如実に示しています。
非専門医の成果
特記事項として、AIを使用した非専門医の症例毎の感度(93.4%)が、AIを使用しなかった専門医(91.0%)を上回る結果となったことは、実に驚くべき事実です。これは、AIの導入が診断の質をどれだけ向上させ得るかを示唆しています。AIは、特に経験の浅い医師にとって心強いパートナーとなる可能性が見込まれます。
AI統合方法の評価
研究では、AIを読む際の2つの統合方法が評価されました。1つは「セカンドリーダー型」で、これは医師が単独で読影した後にAIで確認する方式です。もう1つは「コンカレントリーダー型」で、こちらはリアルタイムでAIを参照しながら診断を行うシステムです。どちらの方法も精度向上につながることが確認され、特にコンカレントリーダー型が効率的であることが分かりました。
肺結節のタイプ別パフォーマンス
研究では、肺結節のタイプによる感度の違いも分析されました。結果は以下のようになっています。
- - Solid nodule(充実性結節):感度51.9% → 72.1% (+39%改善)
- - Pure GGN(すりガラス影):感度44.8% → 73.5% (+64%改善)
- - Part-solid nodule(部分充実性結節):94.9% → 97.4% (高い感度を維持)
このように、全ての結節タイプでAIの助けによる感度の向上が見られました。
専門家の視点
この研究について、長崎大学病院の芦澤和人教授は、「すべての読影医がAI支援により感度が向上したことは重要な成果です」とコメントしています。医療AIの実用性とその可能性を示す結果は、今後の肺がん検診の普及にも寄与することでしょう。
また、プラスマン合同会社の代表、大塚裕次朗氏も「今回の研究結果が診断医の支援に貢献することを期待しています」と述べ、今後もより実用的なAI製品開発に取り組む姿勢を強調しています。
まとめ
長崎大学病院によるこの研究は、AIが医療の現場で持つ力と可能性を如実に体現しています。特に、非専門医が専門医を上回る結果は、今後の医療現場においてAIの利用がどれほどのインパクトをもたらすかを示すものです。今後、このような技術の普及によって、より多くの患者が早期に適切な診断を受けられることを願っています。