動物たちのインターネット
2025年9月17日に発売予定の『動物たちのインターネット生きものたちの知られざる知性と驚異のネットワーク』は、動物たちが持つ多様な知性やその驚くべき行動を明らかにした新しいサイエンス・ノンフィクションです。著者は、マックス・プランク研究所の生態学者マーティン・ヴィケルスキであり、彼の研究は最先端の動物追跡技術「ICARUS」を通じて実現したものです。
本書では、ネズミが地震を察知する様子や渡り鳥同士の夜空での会話、さらにアシカの子どもが人間との関係性を学ぶ過程が描かれています。このように、動物たちは私たちが見逃している地球の変化を敏感に感じ取り、それに反応しているのです。
ICARUSプロジェクトの意義
ICARUSは宇宙を利用した動物研究のための国際的協力プロジェクトであり、20年以上の歳月をかけて発展してきました。無線タグを通じて、動物たちの行動をリアルタイムで追跡し、彼らがどのように環境に適応しているかを可視化しています。このプロジェクトは、動物研究のパイオニアであるヴィケルスキによって実施されました。
彼は、動物たちの動きが自然災害の予測や感染症の拡大、気候変動への適応に関する重要な手がかりを提供することを示しています。まさに、動物たちの行動は地球環境についての重要なメッセージを代弁しているのです。
独自の視点をもった生き物たち
本書には、数々のドラマティックなエピソードが詰まっています。例えば、仲間とはぐれたコウノトリが寒村のおばあさんに足湯を提供してもらう場面や、ハーレムのボスに追われた雄のアシカがキャンプに逃げ込むエピソードは、いずれもユーモラスでありながら、動物たちの豊かな感情や社会的なつながりを感じさせます。
ヴィケルスキ自身の視点から、科学者としての冷静さを持ちながらも、それと同時に動物に対しての愛情に満ちている描写は、読む人を惹きつけてやみません。
未来の観測装置としての意味
動物に無線タグを装着するという行為は、一見すると監視や観察の手段のように見えるかもしれません。しかし本書が描くのは、動物たちに「声」を与える試みでもあります。動物たちは声を持たないため、その動きや行動を通じて私たちにメッセージを届けているのです。
このように見えないネットワークは、気候危機や生物多様性の危機に対抗する手段として、私たち人間に新しい視点を提供してくれます。動物たちが何かを察知しているという視点を持つことで、今後の未来に対する新たな洞察を得ることができるでしょう。
佐藤克文教授の解説
本書の解説は、東京大学大気海洋研究所の佐藤克文教授が担当しています。佐藤教授は、動物たちが持つ異なる視点からの意見に100%賛同し、バイオロギングという分野における重要性を強調しています。彼自身も独自の手法を開発し、動物たちの行動についての新しい知識を発表しており、ヴィケルスキとの親密な関係によって、さらなる理解を深めています。
著者プロフィール
マーティン・ヴィケルスキは、マックス・プランク動物行動研究所の所長であり、国際的にも著名な研究者です。彼の研究は『ニューヨーク・タイムズ』や『ナショナル ジオグラフィック』などでも紹介されており、広く認知されています。動物行動や環境に関心のある読者にとって、本書は必見の一冊です。
書籍情報
- - 書名:『動物たちのインターネット生きものたちの知られざる知性と驚異のネットワーク』
- - 著者:マーティン・ヴィケルスキー
- - 訳者:プレシ南日子
- - 解説:佐藤克文
- - 発売日:2025年9月17日
- - 判型:四六判/320ページ
- - 定価:2420円(本体2200円+税10%)
- - 発行:山と溪谷社
- - ISBN:978-4-635-23027-8
リンク:
山と溪谷社の公式サイト