積水化学とVelocysの画期的な提携
積水化学工業株式会社とアメリカのVelocys Inc.は、CO₂を原料とした合成燃料、いわゆるe-SAFの製造技術を確立するために戦略的提携を結びました。この提携は、持続可能な航空燃料(SAF)の需要が高まる中、航空産業の脱炭素化に向けた新たな取り組みとなります。両社はそれぞれ独自の技術を駆使して、CO2を資源として活用する道を開いていくことを目指しています。
環境保護への期待
国際エネルギー機関(IEA)によると、航空産業は世界のCO₂排出量の約2.6%を占め、その削減にはSAFの導入が不可欠です。航空業界において、持続可能な燃料の導入は2050年までにカーボンニュートラルを達成するための重要な鍵とされており、積水化学とVelocysの連携はその先駆けとなる可能性があります。両社は、CO₂を化学的に変換し、燃料として再利用するCCU(Carbon dioxide Capture, Utilization)技術によって、環境に配慮したビジネスモデルの構築を進めています。
両社の技術的強み
積水化学は、90%以上の高い反応収率でCO₂をCOに変換するケミカルルーピング技術を持っています。この技術は、すでに実証実験において成果を上げており、現在はさらに大規模なプロジェクトに向けた調査を進めています。一方、Velocysは、特にFT反応技術に強みを持ち、都市ごみや産業廃棄物を原料にした合成燃料の生産において20年以上の経験があります。挙げられている技術の中でも、彼らのマイクロチャネル反応器は、従来の方法よりも生産性が6倍から10倍高く、高効率な燃料生産を実現しています。
未来を見据えた連携
今回の提携では、積水化学のケミカルルーピング技術とVelocysのFT反応技術を組み合わせた新しいe-SAF製造技術の方向性を打ち出しています。両社が共同で開発を進めることで、将来的には新規の高効率なe-SAFの製造が実現し、航空業界の脱炭素化に寄与することが期待されています。
積水化学とVelocysの挑戦
現在、積水化学はCO₂からCOへの高反応収率変換を実施するため、小規模な実証研究を行っています。これは実際の製鉄所の排ガスを用いたもので、6ヶ月間の運転実績もあります。また、Velocysも、バイオマス由来のSAF製造に関する国際規格に合致するプロジェクトを推進中で、将来的には1,500バレル/日以上の商業規模を目指しています。
積水化学とVelocysの提携は、単なる共同開発にとどまらず、持続可能な社会に向けた重要な一歩として大きな注目を集めています。各社の知見と技術が融合することで、CO₂を有効に活用した新たな燃料の実現に向けた道筋が開かれるでしょう。