日本とイタリアの文化交流の架け橋となる特別な展覧会が、2025年10月22日から2026年6月28日まで、トリノの東洋美術館(Museo d’Arte Orientale, MAO)で開催されることが決定しました。この個展は、世界的に著名な日本人アーティスト、塩田千春氏による作品群を集めたもので、ALCANTARA®(アルカンターラ)がそのサポートを行っています。
塩田千春氏は、記憶や不安、夢、沈黙といった計り知れない感情を扱ったパフォーマンスやインスタレーションで知られ、個人的な体験を基にしながらも普遍的なテーマを問いかけることで、多くの人々の心を掴んできました。特に、黒や赤の糸を使用したダイナミックかつ幻想的なインスタレーションは、彼女のアートを象徴するものの一つとして広く知られています。
今回の展覧会「Chiharu Shiota: The Soul Trembles」は、既に日本国内や他国の美術館でも高い評価を得ており、森美術館で初めて開催された際には非常に大きな反響を呼びました。その後、韓国の釜山市立美術館、上海の龍美術館、オーストラリアのクイーンズランド・アート・ギャラリーなど、世界各地で巡回してきましたが、イタリアで開催されるのは今回が初めてです。また、東洋美術を専門とする美術館での開催も初の試みとなるため、多くの期待が寄せられています。
本展は、森美術館館長の片岡真実氏とMAOの館長であるダヴィデ・クアドリオ氏との共同でキュレーションされ、アナ・ムシーニやフランチェスカ・フィリセッティがキュラトリアル・アシスタントとして参加。展示内容は、常設展示室を含むMAOの全館に拡がる形式で構成され、ドローイングや彫刻、写真、インスタレーションに加えて、特に本展のために制作されたサイトスペシフィックな作品も登場します。
この展覧会における塩田氏の作品《静けさのなかで》(2002年/2019年)、《時空の反射》(2018年)では、ALCANTARA®製の黒い糸が重要な役割を果たしており、その独特な質感と存在感が彼女のアートの深みを増しています。このように、ALCANTARA®は単なる素材ではなく、塩田氏の表現を広げる重要なパートナーとして位置付けられています。
主な展示作品には、《どこへ向かって》(2017年/2019年)があり、ここでは天井から吊るされた舟が未来や人生の不確かさを象徴しています。また、《不確かな旅》(2016年)では赤い糸に覆われた空間が印象的で、フレームだけの舟が配置されています。他にも、《集積―目的地を求めて》(2021年)では数百個のスーツケースが絶え間なく振動し続けるなど、観客を魅了するさまざまな体験が待っています。
塩田千春氏は1972年に大阪府で生まれ、ベルリンを拠点に活動しています。彼女は生と死をテーマに、多くの感情や記憶を作品に込めています。2008年には芸術選奨文部科学大臣新人賞、2015年には第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館代表に選ばれるなど、多くの受賞歴を持っています。
展覧会の共同主催となる森美術館の片岡真実館長は、長い間アート界での豊富な経験を持ち、数々の国際的なビエンナーレやアートイベントでのキュレーションを行ってきました。今回の展覧会も彼女の専門性が光るものとなっています。
この展覧会は、芸術と文化の世界を深く楽しむための絶好の機会です。特に、現代アートに興味がある方々や、アートを通じた新しい視点を探求している方々にとって見逃せないイベントとなるでしょう。