次世代微生物同定ソフトウェアの誕生
NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)は、株式会社島津製作所、国立研究開発法人産業技術総合研究所との共同研究を通じて、微生物同定における革命的なソフトウェアを開発しました。この新しいソフトウェアは、未培養や難培養を含む約85,000種類の原核微生物を迅速に同定することができます。2023年5月20日に「MicrobialTrack」として市場に投入され、今後の医療や産業界において大きな影響を与えることが期待されています。
開発の背景
微生物の迅速同定は医療、製品の品質管理、バイオ製品の研究開発など、多岐にわたる分野で重要な役割を果たしています。特にMALDI-TOF MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計)を用いた技術は、そのスピードと簡便さから広く利用されていますが、これまでのシステムには培養条件によって同定結果が影響を受けたり、同定可能な微生物の範囲が限定されているなどの課題がありました。さらに、MALDI-TOF MSの異なるメーカーや機種では解析できないという問題点も浮上していました。
MicrobialTrackの特徴
株式会社島津製作所と産業技術総合研究所、NITEとの共同研究を経て開発されたMicrobialTrackは、ゲノム情報に基づく理論質量データベース(GPMsDB)を用いています。このデータベースは、微生物が生成するタンパク質の理論質量を算出しており、これにより約85,000種の原核微生物を同定することが可能です。特筆すべきは、MALDI-TOF MSの機種や培養条件に依存せず、高い精度で同定が行える点です。また、同定の根拠となる微生物のタンパク質情報も取得することができるため、研究の幅を広げる可能性が大いにあります。
期待される効果
このソフトウェアの導入により、食品や医薬品の品質管理における微生物の同定精度が飛躍的に向上し、汚染リスクを軽減することが期待されます。また、 MicrobialTrackが対象とする未培養や難培養微生物の網羅性は、医療、農業、環境科学など多様な分野における基礎研究にも寄与するでしょう。これによって新規微生物を活用したバイオものづくりの促進や、新たな産業創出が見込まれています。
NITEの役割と今後の展望
「経済産業省所管の行政執行法人であるNITEは、工業製品の安全性や品質向上のために多くの技術支援を行っています。バイオテクノロジーセンター(NBRC)は、微生物を保存し、データ提供及び技術支援をしており、世界的にも大規模な微生物保存機関として知られています。NITEは今後も微生物に関する知識と技術を駆使し、バイオ産業の発展を強力にサポートしていく考えです。
まとめ
次世代微生物同定ソフトウェアの登場によって、我々は微生物の世界をより深く理解し、新たな可能性を探求することが可能となりました。これからのバイオ分野の発展に目が離せません。