海洋性紅色光合成細菌のベンチプラント、新設を発表
日本の石油業界に新たな革新の波が押し寄せています。出光興産株式会社は、海洋性紅色光合成細菌の大量培養技術を確立するため、西部石油株式会社の敷地内にベンチプラントを新たに設置しました。このプラントは、2026年2月から実証運転を開始する予定です。
海洋性紅色光合成細菌は、その特性から二酸化炭素(CO2)や窒素(N2)を取り込み、有機化合物を生成することができる微生物です。特に、これらの細菌は環境に優しい資源開発に大きな期待が寄せられており、食料や環境分野で活用されるグリーンバイオ資材としての展望も広がっています。新設されたベンチプラントでは、年間に約1トンのグリーンバイオ資材を製造することが目指されています。
このプロジェクトには、微生物開発に秀でたスタートアップ、Symbiobe株式会社も参画しており、その知見を活かして効率的な有用物質の製造が行われます。また、今回の実証には、電力のコスト削減とCO2を排出しない電力の利用に関する検証も含まれています。これは、持続可能な方法での資源確保を目指す取り組みの一環です。
出光興産は、数年後には商業プラントの運転を開始し、事業化を目指します。その中で、Symbiobeの微生物開発技術と当社のプロセス技術を組み合わせ、より実用的で持続可能な資源の利用を推進します。このプロジェクトが成功すれば、日本のカーボンフリーエネルギー供給に大きく貢献することが期待されます。
西部石油は、2024年に石油精製機能を停止し、地域産業ハブ拠点としての役割を果たすため、地域資源を活用する取り組みを進めています。海洋性紅色光合成細菌の研究においては、海水の供給が容易な沿岸地域に立地する利点を活かし、グリーンバイオ資材の製造に向けたインフラを整えていく予定です。
12月5日には、ベンチプラントの完成を祝う竣工式が行われました。Symbiobe、及び西部石油と連携し、本プロジェクトの進展を加速させることが目指されます。この協業によって、海洋性紅色光合成細菌の産業利用が現実となり、持続可能な社会の実現に寄与することでしょう。
出光興産は、「バイオ・ライフソリューション」の一環として、微生物を用いた新たな製造技術の確立に注力しています。今後、このベンチプラントを基盤に、さらにスケールアップしたパイプラインが構築され、さまざまな産業において活用されることが期待されています。