キリンHD、乳酸菌でコロナ・インフルエンザ感染防御効果を確認
キリンホールディングス株式会社(以下、キリンHD)と国立感染症研究所は共同で、画期的な研究成果を発表しました。乳酸菌の一種である「L.ラクティス プラズマ」の経鼻接種によって、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの感染防御効果が確認されたのです。この研究は、従来のワクチンとは異なるアプローチで、自然免疫を誘導することでウイルス感染を防ぐ可能性を示唆するものです。
自然免疫への着目
これまでの研究では、L.ラクティスプラズマが刺激した形質細胞様樹状細胞(pDC)が新型コロナウイルスの増殖を抑制することが確認されていました。今回の研究では、さらに一歩踏み込み、L.ラクティスプラズマを経鼻接種することで、鼻組織における自然免疫応答を増強できることを実証しました。具体的には、pDCの割合増加や、ウイルス感染防御に重要な抗ウイルス遺伝子の発現増加が確認されています。
感染抑制効果の実証
非臨床実験において、L.ラクティスプラズマの経鼻接種は、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの増殖を抑制する効果を示しました。これは、ウイルス感染初期における防御機構の強化に繋がる重要な発見です。この成果は、第28回日本ワクチン学会および第71回日本ウイルス学会学術集会で発表され、専門家からの高い関心を集めています。
新たな感染症対策への期待
L.ラクティスプラズマは、既存のワクチンとは異なるメカニズムで、幅広い呼吸器ウイルス感染症に対する予防効果が期待できます。安全性が高く、経鼻接種という手軽さも大きなメリットです。この研究は、今後、更なる臨床研究を経て実用化を目指し、世界中の人々の健康に貢献できる可能性を秘めています。
今後の展開
キリンHDは、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の先進的研究開発戦略センター(SCARDA)の支援も受けながら、L.ラクティスプラズマの研究開発を継続しています。そのメカニズムの解明や、更なる効果検証を進めることで、より安全で効果的な感染症対策の実現を目指します。
まとめ
キリンHDと国立感染症研究所によるこの研究は、自然免疫に着目した新たな感染症対策への道を切り開く画期的な成果と言えるでしょう。L.ラクティスプラズマの経鼻接種による感染防御効果は、今後の感染症対策において、大きな希望の光となる可能性を秘めています。今後、臨床研究の進展と実用化に期待が高まります。