エシカル消費を促進する新たなアプローチと価値転換の試み
最近、明治大学商学部の加藤拓巳専任講師とCCCMKホールディングスの共同研究によって発表された新しい研究成果が、多くの注目を集めています。2025年に開催されるAmerican Marketing Association Winter Academic Conferenceと11th International Symposium on Affective Science and Engineeringにおいて、特にエシカル消費を促進するためのコンセプト開発についての研究が発表されたのです。
エシカル消費の現状
エシカル商品とは、環境や社会に配慮した商品を指しますが、消費者がそのような商品の購入を考える場合、前向きな姿勢を示しながらも、実際に購入行動に結びつかないことが少なくありません。この現象は、「言行不一致」と呼ばれ、社会的に望ましい選択肢を選ぼうとする心理的圧力と、実際の購入環境での価値の不明瞭さが原因とされています。
調査結果によれば、中国、タイ、アメリカ、イギリス、ドイツなどの国々で、エシカル消費に対する態度と行動には顕著な乖離が見られます。この課題を解決し、エシカル消費を促進するためには、効果的なアプローチが求められています。
研究のアプローチ
本研究で提案されているアプローチは2つあります。1つ目は、調査目的を「エシカル消費」と明言せず、エシカル要因だけでなく他の要因も考慮した上で、購入態度や行動への影響を評価することです。このアプローチでは、エシカルチョコレートを例に取り上げ、調査環境においても社会的望ましさバイアスの影響を排除することができる結果が得られました。
2つ目は、エシカル要因を消費者価値に変換するコンセプトの開発です。これまでエシカル商品は、利他的な動機を強調することが主流でしたが、これでは消費者個人にとっての価値が見えにくい状況でした。この研究では、生産者の労働条件やアニマルウェルフェアを消費者が理解しやすい価値に転換することに成功しました。
生産者の労働条件と商品品質
まず、生産者の労働条件について考えてみましょう。例えば、劣悪な労働環境で生産されたカカオを使用するのではなく、れっきとした労働権が保障された環境で生産された高品質のカカオを用いることが、消費者にとって重要な価値となることをこの研究は示しています。自動車やファッション業界で見られるクラフトパーソンシップの理論を応用し、労働環境の良さを商品の魅力として打ち出すことが有効であるとされます。
アニマルウェルフェアの新しい視点
また、アニマルウェルフェアの観点からも、新たな視点が導入されました。ケージフリーで育てられた家畜の肉や卵が増えてきましたが、消費者にとってのその価値が不明瞭です。しかし、運動量の多い家畜から得られる商品の特性(肉の脂肪分が少ないなど)を強調することが、商品価値を高めることを援助するでしょう。これは、「潮流の速い発育条件で育った魚が美味しい」という消費者に分かりやすいロジックに基づいています。
まとめ
このように、加藤講師とCCCMKホールディングスの研究は、エシカル消費の促進に向けて新しい視点を提供しています。生産者の労働条件やアニマルウェルフェアを消費者価値に転換し、実際の購入行動に結びつけるための試みは、今後のエシカル商品市場の発展に寄与することでしょう。