理研AIPセンター、今後の展開は?国際競争力強化に向けた新たな計画を発表
理研AIPセンター、今後の展開は?国際競争力強化に向けた新たな計画を発表
理化学研究所革新知能統合研究センター(AIPセンター)は、2016年から10年間の事業として活動し、AI基盤技術の開発や人材育成に貢献してきた。2024年2月26日に行われた情報委員会では、AIPセンターの今後の在り方について議論が行われ、新たな計画が発表された。この計画では、AIPセンターが国内外の卓越した研究者を糾合するハブとなり、国際競争力の強化を目指していくことが明らかになった。
10年間の成果と今後の課題
AIPセンターは、これまで次世代のAI基盤技術開発、科学研究の加速、社会的課題解決、倫理的・法的課題への対応、AI人材育成の5つの柱を掲げて活動してきた。
具体的な成果としては、深層学習の理論解明、医療や災害分野におけるAI技術の実用化、国際的な論文発表、人材育成などが挙げられる。しかし、AI技術の急速な発展や、社会におけるAIへの期待の高まりを受け、AIPセンターは新たな課題に直面している。
課題として挙げられたのは、以下のような点だ。
AI人材の不足: 特に情報系の博士課程進学者が少なく、海外からの研究者に頼る状況が続いている。
AI開発における国際競争の激化: 米国企業が中心となってAI開発が進んでいる中で、日本は周回遅れという指摘も出ている。
AI技術の安全性・セキュリティへの懸念: AIの普及に伴い、倫理的・社会的課題への対応が求められている。
Advanced AIP構想
これらの課題を克服するため、AIPセンターは「Advanced AIP」構想を策定した。
Advanced AIPでは、以下の3つの柱を掲げ、研究開発を推進していく。
Mathematical Intelligence: 機械学習の数理的研究を深化させ、汎用的に活用可能な次世代数理知能技術を獲得する。
Domain Intelligence: AI技術による社会課題解決や科学研究の強化・深化を目指し、医療、防災、物理、生命科学などの分野に貢献する。
Physical Intelligence: 実世界で汎用的に利用可能な人工知能の開発を行い、知能ロボットや社会全体の最適化に繋がる技術を創出する。
また、AIの安全性・セキュリティや倫理的課題への対応、人材育成にも力を入れていく。
理研全体との連携強化
Advanced AIPは、理化学研究所全体との連携強化を図り、理研が持つサイエンスの強みを活かしたAI研究を推進していく。
理研の「AI for Science」プログラムへの参画や、科学研究向けの基盤モデル開発などを通じて、理研全体をAI研究のハブとして位置づける。
課題克服に向けた取り組み
Advanced AIP構想を実現するためには、人材確保や資金調達といった課題を克服する必要がある。
具体的には、以下のような取り組みが必要となるだろう。
人材育成の強化: 大学との連携強化、博士課程への進学促進、社会人ドクタープログラムの拡充などを通じて、AI人材の育成を強化する。
資金確保: 理研全体のAI研究に対する投資を拡大し、Advanced AIPに十分な資金を確保する。
国際的な連携: 海外の研究機関や企業との連携を強化し、人材交流や共同研究を促進する。
社会受容性の向上: AI技術の安全性・セキュリティや倫理的課題への対応を進め、社会全体のAIに対する理解と信頼を深める。
AIPセンターの未来
AIPセンターは、Advanced AIP構想を通じて、国際競争力強化、人材育成、社会課題解決に貢献していく。
今後も、日本のAI研究を牽引する役割を果たしていくことが期待される。
今後の展望
Advanced AIP構想は、日本のAI研究にとって重要な転換期となる。
AIPセンターが、世界をリードするAI研究拠点として発展し、日本の科学技術の発展に大きく貢献していくことを期待したい。