国土交通省のAB-Crossプロジェクトに採択された新浄水システム
株式会社NJSが開発した「ハイブリッド小型緩速ろ過システム」が、国土交通省の令和7年度AB-Crossプロジェクトの分散型システム部門に採択されました。このプロジェクトは、過疎化が進む地域における持続可能な水道システムの導入を目的とするもので、地域住民が維持管理可能な水浄化設備の重要性が増しています。
1. 開発の背景
過疎地域では、人口減少や老朽化した施設の問題が深刻化しています。これに加え、地域経済の弱体化や技術の継承が求められる中で、分散型の浄水システムの必要性が高まっています。特に、中小規模の浄水場において「緩速ろ過方式」が導入されるケースが増加しています。
2. システムの特徴と概要
従来の膜処理施設が抱える高コストやメンテナンスの課題を解決するため、当社は新たな「ハイブリッド小型緩速ろ過システム」を開発しました。このシステムでは、太陽光発電と蓄電池による無電源化を実現し、緩速ろ過の薄弱性を克服するために濁度対応の改良を行っています。
システムの主な構成はシンプルで、樹脂製の市販品(バケツ、塩ビ管、バルブなど)を使用。高濁度の原水を処理し、耐災害性を向上させることで、孤立状況でも安定した浄水処理が可能です。さらに、砂の攪拌による維持管理が改善されているため、作業が軽減され、農業従事者などが副業として雇用を創出する機会にもなります。
システムの特長
1.
高濁度対応の向上: 上向流粗ろ過を導入し、濁度300度の原水を0.1度未満に処理。
2.
洗浄作業軽減: 逆張洗浄法により、砂面の作業を軽減。
3.
多様な水質対応: 生物活性炭で色度を除去。
4.
安全性確保: 紫外線設備でフルバリア対策。
5.
高いメンテナンス性: 深紫外線LEDを導入し、低消費電力。
6.
エネルギー確保: 太陽光発電による無電源化。
7.
地域雇用の創出: 休耕地を活用し、維持管理を地元で行うことで新たな雇用を促進。
3. AB-Crossでの実証事業概要
この新システムは、熊本県天草市と長野県中川村で実証フィールドが設定され、共同研究体が事業を進めます。実証実験では、多様な水質のエリアにシステムを設置し、浄水処理の安定性と維持管理の容易さを技術的に検証します。
実施期間
令和7年度から8年度の2年間にわたって行われる予定です。この取り組みにより、地域の水道事業者における革新が期待されています。特に、過疎地域における持続可能な水供給システムの確立に向けた重要なステップとなるでしょう。