株式会社HR andの挑戦
産業機器メーカーの事業部が直面する組織課題に取り組んだ株式会社HR andのプロジェクトが、注目を集めています。代表取締役・神吉徹二氏は「HRカンファレンス2025-秋-」での講演を通じて、HRBP(人事ビジネスパートナー)の進化について語り、その際に取り上げた事例が高い評価を得ています。
事業部が抱える人材課題
今回のプロジェクトの始まりは、産業機器メーカーの事業部からの依頼でした。依頼内容は、年齢構成や人員数といった既存人材を考慮し、この制約の中で計画的かつ能動的な人材育成や配置を進めたいというものでした。しかし、HR andがファシリテーションを進める中で、実際に取り組むべきテーマは“人材戦略の策定”ではなく、事業推進において現れた組織課題の構造的整理と合意形成であることが明らかになりました。
主要マネジメント層との対話
プロジェクトには、本部長や副本部長を含む14名の役職者が参加しました。彼らは人材戦略の必要性を認識していましたが、以下のような制約に直面していました。
- - 年齢構成や人員数が多く、多くの制約が存在
- - 品質第一の文化が根付いているが、これが慎重さを過度に引き起こす
- - 部門間の連携が難しく感じられる
この状況下で「どこから手をつけるべきか」についての合意が形成できず、人材戦略が“構想止まり”の状態でした。
組織課題に着目したアプローチ
ここで注目したのは、参加者全員の本音を引き出すことでした。例えば、「事業の成長のためには、人事課題に目を向けるのではなく、目標達成を妨げる組織課題に注目する必要がある」という合意が得られました。具体的には、次の3つの切り口で問題を整理しました。
1.
文化:「品質第一」が強みである一方、慎重すぎて重要施策が進まない。
2.
組織・仕組み:組織間連携は進んでいるが、セクショナリズムが残っている。
3.
人材:重要な行動様式が組織全体に浸透しておらず、その実装ができていない。
このプロセスを通じて、参加者間での合意形成が進み、組織としての共通理解が深まりました。
2028年までの行動計画
このプロジェクトを経て、参加者は2028年までに以下の施策を継続することで合意しました。
- - 文化:部課長と経営が対話を通じて小さな施策を試し続ける。
- - 組織/仕組み:製品開発などの重要局面での部門連携施策を実験し続ける。
- - 人材:人材マップを利用して、「質」と「量」を可視化する。
このように、計画書として完成させるだけでなく、実行を重視したアライアンスの形成が今回の成果です。
顧客からの評価
支援終了後、顧客からは「過去10年以上進展しなかった人材戦略が今までの対話と構造化を通じて具体的な行動へとつながった」との評価が寄せられました。このプロジェクトは、組織としての長期的な取り組みの覚悟を揃える過程でもあったと言えるでしょう。
まとめ
今回の事例は、既存の人材の年齢構成や規模に伴う制約を抱える多くの企業にとって、非常に示唆に富んでいます。制約を前提にすることで、ただ「戦略が描けない」と諦めるのではなく、組織課題として捉え直すことがいかに重要であるかを教えてくれます。HR andはこれからも、企業の持続可能な成長を支えるHRBP機能の強化に向けたサポートを続けていきます。