音響データ解析による異種金属超音波接合の品質評価技術の革新

異種金属超音波接合の新技術

最近、国立研究開発法人産業技術総合研究所（以下、産総研）に所属するマルチマテリアル研究部門の丸山豊主任研究員が、異種金属同士の超音波接合について非常に興味深い新技術を発表しました。この技術は、接合中の音響データをもとに接合の良否を迅速に判定するもので、特に金属製品の品質管理や生産性向上に寄与することが期待されています。

超音波接合技術とその重要性

超音波接合技術は、金属同士を溶接するのに非常に効率的な方法です。超音波振動と圧力を組み合わせることで、金属原子同士が直接接触し、より強固な接合が実現します。この技術は特に、バッテリーの電極接合や輸送機器の軽量化に用いられており、電気抵抗が低く、接合時間も短いため、製造業で重宝されています。

しかし、異種金属の接合には特有の課題があります。例えば、接合強度にばらつきが出ることが多く、従来の方法では高コストな検査を通じて全ての接合部を確認する必要がありました。そのため、新たな手法が求められていました。

音響データを用いた接合良否の判定

今回、産総研の研究チームが開発した技術は、接合に際して発生する音響データを利用して、接合の良否を高精度で判定できるものです。この技術の基盤は、マハラノビス距離と呼ばれる統計的手法にあります。この手法を用いることで、接合時の音響データを解析し、接合が成功したか失敗したかを明確に識別することが可能になります。

具体的には、研究チームはAl合金とMg合金を接合する際に発生する音響データを対象に、スペクトログラムと呼ばれる音の可視化技術を使いました。また、非負値行列因子分解（NMF）といった手法を用いることで、音響データの複雑な情報を整理し、接合の良否に関連する指標を抽出しました。これにより、音響データから接合強度を予測するという新たな可能性が開かれました。

実績と今後の展望

産総研の研究チームは、今後、さらに多様な金属に対する接合技術を探求し、音響データと接合強度との関連性をより深く理解していく計画です。加えて、製造ラインの環境での実際のデータ取得を想定した技術や手法も開発される予定です。

この新技術は、音響データから得られる情報を利用して、非破壊かつ迅速に接合強度を確認することが可能です。これにより、製造コストの削減と製品の信頼性向上が期待されます。

産総研では、2025年5月22日に「産総研中部センター講演会」でこの技術の詳細を発表する予定です。未来の金属接合技術において重要なマイルストーンとなるかもしれません。