JR東日本、鉄道電気設備設計のDX化を加速!点群データとBIMモデル活用で業務効率大幅向上
JR東日本は、安全・安定輸送のさらなるレベルアップと将来の労働人口減少を見据え、鉄道設備の設計・施工から設備維持管理に至るまで、業務のDX化を積極的に推進しています。その一環として、点群データとBIMモデル※1を活用した取り組みを強化し、設計・施工および設備維持管理における労力軽減を目指しています。
2022年度から導入した鉄道電気設備設計ツール「Railway-Eye」※2に、新たに設計図面の自動作成機能や信号機等の見通し確認機能を追加することで、設計作業時間の約2割削減を目指しています。さらに、部門間でデータを共有できる共通データ基盤を活用することで、鉄道設備の設計・施工および設備維持管理のDX化をさらに推進し、お客さまサービス品質の向上を目指しています。
1. 鉄道設備の設計・施工におけるDX推進の概要
JR東日本は、点群データとBIMモデルを活用することで、鉄道設備の設計・施工から設備維持管理までのプロセスの業務効率化を推進しています。従来は、鉄道設備の調査が夜間の限られた時間で行われ、土木・電力・信号等の関係する係員が工事設計の都度、現地で計測や設置位置の検討を行っていました。しかし、3Dレーザースキャナやカメラで撮影した点群データと、それを基に作成したBIMモデルを活用することで、机上での計測や検討が可能になり、現地調査を最小限に抑えられます。
また、鉄道設備の設計においても、従来は必要な図面や技術検討資料などをそれぞれ作成・管理していましたが、BIMモデルを作成することで、様々な図面・資料を自動作成することができ、生産性向上に繋がります。
2. 「Railway-Eye」を導入した鉄道電気設備設計
(1) 現地調査・設計段階での活用
2022年度より、鉄道電気設備の設計ツール「Railway-Eye」を活用して3Dモデリング、寸法計測、レイアウト検討を実施してきました。今回、3Dモデルに設備の諸元(規格、仕様、製造年月、メーカー等)や環境条件(風速、温度等)を加えたBIMモデルを作成することで、平面図や装柱図※のような設計資料を自動作成する機能が追加されました。設計条件や設計内容に変更が発生しても、BIMモデルのデータを修正することで設計資料がすべて連動し変更されます。さらに、工事計画の変更が発生した場合も、すでに取得した点群データを用いることで、現地調査を省略することが可能となります。これらの機能を活用することで、図面作成や技術検討等の設計業務において、約2割の作業時間削減を目指しています。
(2) 設置位置検討での活用(信号機等の見通し確認)
鉄道では、運転士が所定の位置で信号機を確認し運転しているため、信号機を適切な位置に設置し、視認性が確保されていることが重要です。従来は、信号機を新設・改良する工事において、運転士の視点からの信号機を確認するため、夜間等に線路内に脚立を設置して同じ目線を再現する作業が必要で、多くの労力と時間がかかっていました。
今後は、現地の点群データを取得し、「Railway-Eye」に取り込み、信号機の新設位置をBIMモデルとして配置することで、運転士の所定位置からの確認を「Railway-Eye」でできるようになります。また、遮蔽物を自動認識するため、設置位置をシステム内で調整することが可能になります。
3. 鉄道設備の設計・施工および設備維持管理のDX推進 ~共通データ基盤の運用について~
現在、鉄道設備の設計・施工から設備維持管理までのプロセスにおいて、部門ごとに点群データやBIMモデルの活用を推進しています。今後は、新たに構築した社内の共通データ基盤上で点群データやBIMモデルを部門間で相互に活用することで、施工計画の可視化や工程管理をよりスムーズに行うことができるよう、さらなるDXを推進します。また、過去データとの比較による設備状態把握をAI等を活用して実現することで、設備の維持管理レベルを向上していきます。
これらの取り組みを通じて、JR東日本は質の高い鉄道サービスを提供し、お客さまサービス品質のレベルアップを目指しています。
※1 BIMモデル:Building Information Modeling の略で、様々な情報を結び付けた三次元構造物モデル
※2 Railway-Eye:3次元点群データを用いた計測・設計業務等の効率化を目指して、(株)富士テクニカルリサーチ(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:名取孝)と共同開発した点群処理ソフトウェアです。なお、「Railway-Eye」は(株)富士テクニカルリサーチの登録商標です。