阪神・淡路大震災からの30年、移動型歯科クリニックの新たな提案
阪神・淡路大震災から30年を迎え、この点を記念し医療MaaS車両による「移動型歯科クリニック」の体験会が2025年1月17日から19日の間、神戸ハーバーランドで開催されました。この体験会は、特に被災地や過疎地における口腔ケア支援を目的とし、株式会社フィールトラストが中心となって行われました。
医療MaaS車両「MedaaS」とは?
本イベントで使用された医療MaaS車両「MedaaS」は、最新の口腔内スキャナーやデジタルデンチャーの技術を用いたもので、参加者はそこで歯科検診を受けることができました。歯科遠隔医療の専門家である長縄拓哉医師や医療MaaSの推進者、木下水信医師の監修のもと、新たな医療支援モデルが研究されました。特に、迅速な義歯製作ができるデジタルソリューションには来場者から高い評価が寄せられました。
参加者の反応
体験会では多くの高齢者が参加し、医療MaaS車両を使った歯科検診を受けられることに感謝の声を上げました。一部の参加者からは、「自宅近くでの診療が受けられるのはありがたい」といった意見もあり、地域における医療アクセスの向上に寄与する可能性が示されました。
背景にある医療の課題
近年、大規模な自然災害の発生が相次ぐ中、被災地での医療支援の重要性が再認識されています。特に、阪神・淡路大震災では震災関連死の24%が肺炎によって引き起こされたことが報告されています。多くが口腔ケア不足や義歯の紛失に起因していることがわかっています。平常時でも、高齢者が最寄りの医療機関までアクセスできない状況が深刻な課題となっています。
統計データから見える現状
75歳以上の高齢者世帯の約20%が医療機関まで1km以上離れていることは、医療へのアクセスの大きな障壁となっています。特に、要介護高齢者のうち64.3%が歯科治療を必要としているにもかかわらず、実際に受診できているのはわずか2.4%となっています。これに対し、移動型クリニックが大きな解決策となり得るのです。
イベントの意義
この移動型歯科クリニックの体験会は、阪神・淡路大震災から30年を経た今、被災地での医療支援の新たなモデルを示す重要な取り組みになりました。震災を通じて得られた教訓をもとに、口腔ケアの重要性を社会に伝える機会となりました。また、普段の生活における医療アクセスの課題にも目を向ける契機となっています。
未来への展望
フィールトラストが展開する医療MaaS車両を利用した新たな歯科医療モデルは、今後の地域医療において重要な役割を果たすと期待されています。災害時だけでなく、日常的に医療支援が必要な地域社会において、より多くの高齢者や要介護者が獲得できる歯科治療の機会を提供することが目指されています。また、将来的にはドローンを活用して製作した義歯を自宅に届けるサービスも検討されています。
これにより、地域医療の新たな可能性だけでなく、健康寿命の延伸や歯科技工士不足の解消など、さまざまな社会課題に対応できる基盤が整いつつあります。 今後、医療MaaS車両「MedaaS」の実用化が進むことで、すべての人に歯科医療が届けられる未来を目指しています。