令和5年度市町村決算速報:歳入67兆円超え、財政安定への課題
令和5年度の市町村普通会計決算速報が発表され、全国の1,741団体の財政状況が明らかになりました。2023年8月末を基にしたこの速報では、歳入が約68.7兆円、歳出が約66.4兆円となっており、歳入は前年に比べて約0.3兆円増、歳出も約0.5兆円の増加が確認されました。
財政の明暗
今年度のデータによると、歳入の増加は主に地方税からの収入が要因です。特に、固定資産税や個人市町村民税の増加が顕著であり、これによって地方行政の基盤が強化されつつあることがわかります。一方で、国庫支出金の減少も見受けられ、新型コロナウイルス感染症への対策としての臨時交付金の減少が財政運営に影を落としています。
東日本大震災の影響
特に注目すべきは、東日本大震災関連の復旧・復興事業の収支が「東日本大震災分」として区分されています。本年度は、この分野の歳入が0.3兆円でしたが、前年からは若干の減少があり、依然として復興への道のりは長いことが示唆されています。通常収支分からは、これらの震災関連の会計を差し引くことで、より平常時の財政状況が見えるようになっています。
厳しい財政状況
歳出の面では、増加した扶助費が目立ちます。低所得者世帯への給付金が増えたことや、急速に進化する社会のニーズに応えるため、柔軟な予算編成が求められています。これに対し、コロナワクチン接種事業の減少が物件費の削減につながり、全体的に見れば厳しい財政状況からの回復が試みられています。
実質収支
決算収支の結果、実質収支は1兆7,279億円の黒字を記録しましたが、前年に比べると約2,572億円の減少となっています。この結果については、全団体が黒字を維持しているものの、実質単年度収支は3,370億円の赤字に転落しており、財政の健全性に影響を及ぼしています。
地方債の動向
地方債の現在高は53兆8,181億円であり、昨年からの減少が見られますが、臨時財政対策債を除く純粋な地方債は35兆4,642億円と増加している点に興味が持たれます。これらのデータは、今後の地方自治体の財政健全化への影響を見極めるうえで重要な指標となるでしょう。
結論
令和5年度の市町村普通会計決算速報は、地方財政にとって安定した状況を映し出しているものの、引き続き国庫からの支出減少や、東日本大震災に関連する事業の影響が課題として残ります。今後も状況を見守り、持続可能な財政運営を進める必要があります。地方自治体は、これらの課題に対処しながら、地域発展を目指すことが強く求められています。