岡山大学、骨構成成分を活用した重金属除去デトックス材料を開発

岡山大学、重金属除去の新たな光

国立大学法人岡山大学は、腸内での重金属除去を目的とした新しいデトックス材料を開発しました。これは、骨の構成成分であるリン酸カルシウムを用いて作られたもので、効率的に重金属を排出する機能が期待されています。

開発背景と材料の特性

この研究を主導したのは、岡山大学学術研究院医歯薬学域（歯）の松本卓也教授、岡田正弘准教授、大学院生のAhmad Bikharudin氏を含むグループです。彼らは、骨代謝の過程にインスパイアを受け、消化器官に進入する重金属の効率的な除去を目指しました。

リン酸カルシウムは、骨の成長や維持に関与する結晶物質であり、今回はこの特性を利用したデトックスのアプローチが行われました。研究チームは、この材料を合成し、重金属を含む水を飲ませたマウスに与えた実験を実施したところ、リン酸カルシウムは胃内で溶解し、小腸内の中性pH環境で再結晶化することを明らかにしました。これにより、100μg/mlという高濃度でもほぼ100%のCd（カドミウム）を除去することができるという結果を得ました。

重金属問題とデトックスの必要性

カドミウムは、特に土壌から穀物を通じて人体に侵入しやすく、アジア地域の食生活においてはその摂取が特に問題視されています。公害病「イタイイタイ病」の原因物質としても知られ、多くの国で重金属の基準超過が報告されており、効率的なデトックス剤の開発は急務と言えるでしょう。

研究成果の発表

この研究の成果は、英科学誌『Journal of Hazardous Materials』に掲載され、全世界へその成果が発信されました。著者たちは、リン酸カルシウムが体への安全性も高く、手軽に服用可能な解毒剤としての活用が期待されると述べています。従来の活性炭やキレート剤と比較しても、高い重金属除去能力を持つこの新しいデトックス材が広まり、健康への貢献を果たすことが期待されています。

松本教授はこの発見を受け、「重金属除去への新しいアプローチとして、日常的に摂取可能な材料の開発は非常に意義深い。一人でも多くの人にこの効果が届けられることを願っている」とのコメントを残しました。

研究資金と今後の展望

本研究は、日本科学技術振興機構や日本学術振興会からの支援を受けて実施されました。今後、このデトックス材料の更なる研究開発が進めば、農業分野や健康食品としての利用も視野に入るでしょう。

実験データや研究内容の詳細は、公式サイトでも公開されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。重金属除去の新たな将来に期待が寄せられています。