月面基地建設を支える新たな物理シミュレーション技術
宇宙開発の最前線では、月面に基地を建設するためのさまざまな技術が進められています。その中でも、VMC Motion Technologies株式会社が開発した月面環境を対象とした物理シミュレーション技術が注目を集めています。このプロジェクトは、国土交通省と文部科学省が共同で進める「宇宙無人建設革新技術開発推進事業」に選ばれたもので、JAMSSが展開する「トータル月面建設システム」のモデル構築に基づいています。
物理シミュレーションの目的
この物理シミュレーションは、月面特有の重力や地形の影響を反映し、実際にローバーを走行したり、資源採掘のために土を掘ったり、基地を構築したりする際の高精度な動作を再現することを目的としています。使用するのは、物理エンジン「AGX Dynamics」で、これによりリアルな動作シミュレーションが可能になります。
さらに、NASAが提供する「CGI Moon Kit」に基づき、月探査プロジェクト「アルテミス計画」での具体的な作業環境を忠実に再現する計画も進んでいます。これにより、月南極付近での実際の作業条件をシミュレートすることができると期待されています。
新たな拡張性と応用可能性
VMC Motion Technologiesのシミュレーションでは、レゴリスと呼ばれる月面を覆う砂など、今後の探査活動によって得られる未知のデータも取り入れることが可能です。これにより、長期間にわたりさまざまな用途に応じたシミュレーションが行える柔軟性を持ったプラットフォームの構築を目指しています。
今後、宇宙建設革新プロジェクトの観点から、地上の建設事業にもその技術を活かすことが期待されています。具体的には、建機操作の訓練や大規模工事の施工計画、さらには自律施工技術の開発にも役立つことが見込まれています。
高精度なシミュレーションの技術背後
月面シミュレーションには、ゲームエンジンである「Unreal Engine5」と、アルゴリズム計算に使う「AGX Dynamics」が採用されています。これにより、月面での作業をリアルに再現できるシミュレーション環境を整備しています。
AGX Dynamicsは、高速かつ正確な物理エンジンで、多くの訓練シミュレーターやエンジニアリング用途のシミュレーションに広く利用されています。スウェーデンのAlgoryx Simulation AB社が開発し、日本ではVMC Motion Technologiesがその販売とサポートを手掛けています。
NASAのアルテミス計画とは
NASAが主導するアルテミス計画は、2025年以降に月面に人類を送り、月周回の有人拠点「ゲートウェイ」を通じて、月面基地の建設と持続可能な活動を実現することを目指しています。
VMC Motion Technologiesの展望
VMC Motion Technologiesは、物理シミュレーション技術の開発を中心に、様々な分野での技術コンサルティングを提供する企業です。ロボットや建設機械の設計・製造、土木施工、さらには海洋や工場の大規模なシミュレーション構築にも成功した実績があります。今後も、宇宙建設革新プロジェクトに関連するシミュレーション開発に携わっていくことで、さらなる技術の進化が期待されます。
公式サイト:
VMC Motion Technologies