南アルプス・光岳での新たな挑戦
2023年5月19日、山と溪谷社から刊行された書籍『私、山小屋はじめます』。著者は32歳の小宮山花さん、通称「はなちゃん」です。彼女は大学卒業後、東京での就職を経て、友人との人間関係の悩みから退職を決意。仕事をする場所として選んだのが、南アルプスの光壮な自然の中に位置する光小屋です。彼女の物語は、この小屋の管理人としての挑戦から始まります。
光岳小屋の遠い道のり
光小屋は、登山口から9時間半のトレッキングを要する、まさに秘境の地。日本百名山を踏破した者でも、最後に訪れる場所とされています。2020年4月、彼女は山小屋管理人募集の情報を見つけ、運命の扉を開くことになります。
コロナの洗礼
しかし、彼女の初年度はコロナウイルスの影響で事業のスタートを切れない結果に。全国の山小屋が休業を強いられ、光小屋もその例外ではありませんでした。1年間の準備期間の中で、彼女は未来を見据えて心を整えます。決して無駄な時間ではなかったと感じる時間を過ごし、次の年への戦略を練ります。
新型コロナ禍からのスタート
2022年、彼女の山小屋運営が始まります。コロナ対策で定員は14名に減少し、心配の種は尽きませんでした。限られた人数での経営は、新たなメニューの開発や寝具の見直しなど、様々な試行錯誤を強いました。その中で、彼女が選んだのは、「より心地よい眠りを提供するために、ベッド導入」の案でした。
看板メニューの開発
2023年には、基盤が整ったことで、具体的なイメージを描けるようになりました。山小屋の夕食としてふさわしいと考えたのは「マッサマンカレー」。力をつけるための鶏肉と、光岳で深田久弥が食べたとされるパイナップル入りゼリーの組み合わせが登場します。試行錯誤の末に生まれたメニューは、登山者たちに新たな力を与えるものとして根付いていきます。
逆境との闘い
しかし、2024年に入るとまた新たな壁が立ちはだかります。国立公園内でのテント設営が指定地以外で禁止されているにもかかわらず、キャンプを無視した登山者たちが現れるという事件が発生。意見の不一致からの溝は深まり、緊張感が高まる中で管理人としての責任を痛感するはなちゃん。彼女は次第に自らの役割の