STマイクロエレクトロニクスの新技術がもたらす未来
STマイクロエレクトロニクス(ST)は、最新のGaN(窒化ガリウム)技術を駆使した新しいモーション制御用GaN ICプラットフォームを発表しました。これは、生活家電や産業機器のモータ駆動部において、電力効率の向上、高性能化、さらにはコスト削減を実現するものです。
GaN ICの市場での役割
近年、スマート家電や省エネに対する関心が高まっており、これに応える形でSTは新たなGaNパワーICの投入を決定しました。この製品は、市販のGaN電源アダプタやチャージャに応じた高効率性を備え、ノートPCやUSB-Cデバイスに最適な電力供給が可能です。
先進的なモーション制御技術
STの特定用途向け製品事業部のジェネラル・マネージャーDomenico Arrigo氏は、「GaNSPIN SiP(システム・イン・パッケージ)」プラットフォームの特徴を強調し、これがモーション制御アプリケーションにおけるワイド・バンドギャップ半導体の効率を最大限に引き出すと述べています。この新製品により、次世代の生活家電はより高い回転数と性能を実現すると期待されています。
製品の具体的な仕様
新しい製品ファミリの初号機である「GANSPIN611」および「GANSPIN612」は、最大400Wのモータを駆動し、家庭用や産業用のコンプレッサやポンプ、ファン、サーボ・ドライブに対応しています。ピン配置の互換性があり、設計の拡張も容易です。また、GANSPIN611は現在量産中で、QFNパッケージで提供されています。
技術的なメリット
GaNSPIN SiPは、ハード・スイッチングに起因するモータへのストレスを軽減し、電磁ノイズも最小限に抑えることが可能です。公称スルー・レート(dV/dt)は10V/nsで信頼性を保ち、EUのEMC指令への適合も容易になります。これにより、開発者はスイッチング性能を微調整し、アプリケーションに最適な設計が可能になります。
オン抵抗(RDS(on))がGANSPIN611で138mΩ、GANSPIN612で270mΩと低く、多くのアプリケーションにおいてヒートシンクなしでの運用が可能です。その結果、部品点数の削減や基板面積の最大60%削減が期待され、さらなるコスト削減につながります。
多様な保護機能
この製品には、異常検出コンパレータや過電流保護機能、また低電圧ロックアウト(UVLO)や過熱、過圧障害の保護機能も搭載されています。これにより、ユーザーは安全に、高効率に生活家電を運用することができます。
STのビジョン
STマイクロエレクトロニクスは、持続可能な社会の実現に向け取り組んでおり、2027年末までに再生可能エネルギーの使用を100%にする計画も発表しています。具体的な技術には、環境に配慮したエコデザインの強化が見込まれています。
11月25日から27日まで開催されたSPS(Smart Production Solutions)では、STのブースでGaNSPINモータ・コントローラのデモも行いました。これからの家電や産業分野への波及効果が期待されます。今後、STの製品がどのように私たちの生活を変えるのか、目が離せません。
詳しい情報はSTの公式ウェブサイトを要チェックです。