大麦の摂取がもたらす腸内環境の変化
最近の研究によると、大麦の摂取が腸内の微生物叢に及ぼすプラスの影響が示され、特に血糖値の抑制に関与することが分かりました。この研究は、株式会社はくばくと慶應義塾大学、大妻女子大学との共同で行われ、特に大麦に含まれるβ-グルカンという成分の重要性が強調されました。
研究の背景
腸内細菌のバランスと生命に与える影響は、これまでに何度も研究されてきました。食事、特に食物繊維の摂取は、腸内細菌の構成に大きく関与しています。大麦には、特にβ-グルカンという水溶性の食物繊維が豊富に含まれており、これが腸内細菌やその代謝物に影響を与える可能性があると指摘されています。これまでの研究では、大麦の摂取が特定の腸内細菌の増加を引き起こし、糖代謝の改善に寄与していることが示されていますが、β-グルカンが腸内細菌叢に与える詳細な影響についてはあまり探求されていませんでした。
研究の目的
本研究の目的は、β-グルカンを含む大麦粉と含まない大麦粉の摂取が腸内細菌や代謝物質に与える影響をマウスモデルを用いて調査することです。特に、コハク酸産生菌であるParasutterella属菌とその代謝物が関与しているかどうかを明らかにすることが主な目標とされました。
研究の方法
研究は2つの試験に分けて実施されました。
1.
試験1: 4週齢のマウスをβ-グルカンを含まない大麦粉(BGL)またはβ-グルカンを豊富に含む大麦粉(BF)のいずれかを含む食事に分けて8週間摂取させました。この際、腸内細菌叢や代謝物質を詳細に解析しました。
- 結果:BF群のマウスではParasutterella属菌やコハク酸が有意に増えたのに対し、BGL群ではそのような変化は見られませんでした。
2.
試験2: スポンサーの遺伝子が欠損したマウスと野生型マウスを用い、同様の実験を行いました。コハク酸吸収に関連する遺伝子が欠損したマウスでは、BF摂取後も腸内のバランスは維持されましたが、耐糖能の改善効果は認められませんでした。
研究の結果
この研究から、大麦の摂取によって腸内細菌が変化し、それが次第に血糖値の上昇抑制に寄与することが示されました。特に、コハク酸とその産生菌であるParasutterella属の存在は、重要な役割を持つことが立証されました。繰り返しになりますが、コハク酸が腸内での糖代謝に影響を与えていることは大きな発見です。
今後の展望
今後は、コハク酸の作用をさらに詳しく調べる必要があります。特に、ヒトにおける大麦β-グルカンの効果や長期にわたる腸内環境への影響を調査していくことが求められます。また、Parasutterella属菌が示す生理的役割についてもさらなる研究が必要です。これによって、糖代謝を改善するための新たな介入法が見出されるかもしれません。
この研究は、科学雑誌『npj Science of Food』に掲載され、多くの関心を集めています。高血糖や糖尿病に苦しむ方々にとって、今後の大麦を用いた健康食の提案が期待されるでしょう。