成瀬ダムにおけるタワークレーンの革新
秋田県で進められている成瀬ダム工事では、タワークレーンの最新技術が導入されています。鹿島建設が開発した「TawaRemoⓇ」という遠隔操作システムを利用することで、オペレーターが長時間運転席にいる必要がなくなり、作業環境の改善と生産性の向上が実現しました。この技術の導入により、莫大なコンクリートの打設作業がより安全かつ効率的に行われています。
遠隔操作技術「TawaRemo」の概要
「TawaRemo」は、地上からタワークレーンを遠隔操作するためのシステムで、専用のコックピットを通じて、安全かつスムーズな操作が可能です。このコックピットには、運転席同様の操作レバーやフットスイッチが設置されており、画面上で複数のカメラ映像を確認しながら作業を進めることができます。
また、ジャイロセンサーによって、タワークレーンの揺れを把握し、より繊細な操作を実現しています。このことで、オペレーターは遠隔でありながらも現場での作業を直感的に行うことができるのです。
自動運転システムと安全管理
更に、「TawaRemo」だけでなく、自動運転技術「ティーチングプレーバック方式」も導入され、最適な運搬ルートが記憶され、条件に依存せず安定した作業が可能になりました。これにより、オペレーターは単調な運転から解放され、監視業務に専念することができ、安全性も高まっています。
鹿島建設が開発した「スマートG-Safe」という車両運行管理システムも大きな役割を果たしています。これはGNSS(衛星測位システム)を使用し、現場の安全性をリアルタイムで管理するシステムです。タワークレーンの周囲の作業員や車両の位置情報を把握することで、事故防止につながっています。
生産性と安全性の向上
これらのシステムを組み合わせることで、成瀬ダムの施工現場では生産性が約20%も向上し、作業の所要時間が大幅に短縮されました。具体的には、オペレーターの移動時間が65分短縮され、クレーン運転の効率が16%増加したのです。さらに、視界不良の条件下でも自動運転により安定した打設が可能になり、平均打設速度も約5%向上しています。
将来への展望
鹿島建設は今後、この技術を他の建設現場にも広げ、さらなる作業効率化を目指しています。将来的には、複数のタワークレーンを一人のオペレーターが遠隔操作できるようなシステムの実現を目指しており、これが実現すれば、建設現場の働き方も大きく変わることでしょう。
本システムの導入により、成瀬ダム工事はまさに新しい時代の建設のモデルケースとなっています。これからのダム工事や他の建設現場での技術の発展にも期待が高まります。
工事概要
- - 工事名: 成瀬ダム堤体打設工事(第2期)
- - 工事場所: 秋田県雄勝郡東成瀬村椿川
- - 発注者: 国土交通省東北地方整備局
- - 施工者: 鹿島・前田・竹中土木特定建設工事共同企業体
- - 工事諸元: 台形CSGダム、堤高114.5m、堤頂長755m、堤体積485万㎥、貯水量7,850万㎥
- - 工期: 2023年6月〜2026年12月