アボットが生体吸収性薬剤溶出スキャフォールド臨床試験を日本で開始

アボットの革新的な心臓治療法の臨床試験が始動



アボット・バスキュラー・ジャパン株式会社は、2013年6月12日、国内において生体吸収性薬剤溶出スキャフォールド(BVS)の無作為化比較試験を開始することを発表しました。この臨床試験は、BVSの新規承認申請に関する重要なデータを提供するものとなります。

アボットのBVSは、網目状のチューブ形状を持ち、心疾患の一種である冠動脈疾患(CAD)の治療を目的として開発されました。このデバイスは、閉塞した血管を拡張し、正常な血流を回復させ、体内で自然に吸収されることが特徴です。そのため、従来の金属製ステントとは異なり、「仮設構造物」を意味するスキャフォールドという名称が付けられています。

本治験では約400人の参加者が登録され、アボットの金属製薬剤溶出ステントであるXIENCE®シリーズと比較し、BVSの有効性と安全性を評価します。主要な評価指標は、12ヶ月後の治療効果であるTLF(心臓死、心筋梗塞および虚血性標的病変血行再建)の複合評価項目です。

心臓病は、近年、日本でもその死亡率の増加が懸念される重要な健康問題です。特にCADは、世界的には主要な死因とされ、日本でも食生活やライフスタイルの変化によってリスクが高まっています。患者は、血管内の脂質の蓄積によって血流が阻害され、胸痛や息切れに悩まされます。

京都大学の木村剛教授は、本治験がBVSの新しい治療法として注目される理由を説明しています。「BVSは完全に生体吸収され、体内に異物を残さないため、新たな治療選択肢として期待されています。これまでの海外での試験でも良好な結果が出ており、日本での承認が進むことを期待しています」と述べています。

また、治験中には画像診断法を用いて、BVSの治療効果が詳しく評価される予定です。被験者は、治療後5年間にわたる経過観察を受け、CAD患者におけるBVSの長期的な効果が明らかにされるでしょう。

治験の最初の症例は湘南鎌倉総合病院の齋藤滋医師によって登録されました。齋藤医師は、BVSの使用方法や効果について、高い評価をしています。「アボットのBVSは、金属製ステントと比べて使用感が良好で、血管への適合性も優れています。さらに体内で代謝されるため、患者にとって非常に魅力的な治療法となります」とコメントしています。

アボットのハービンダー・シン社長は、循環器疾患治療の向上に向けて取り組む姿勢を示しました。「本治験を通じて、日本での革新的な医療技術の導入が進むことを期待しています。BVSの承認申請に向けて、前進していく所存です」とし、治療法の早期実用化に向けた意気込みを語りました。

BVSは、体に吸収されてしまうため、従来の金属ステントとは違って、患者に新たな希望を提供すると言えます。この治療法が導入されることで、CAD患者の治療選択肢が大きく広がることが期待されます。 今後の研究と臨床での結果に注目が集まります。

会社情報

会社名
アボット バスキュラージャパン株式会社
住所
東京都港区三田3-5-27住友不動産三田ツインビル西館 4階
電話番号
03-4560-0700

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