女優・秋吉久美子さんと作家・下重暁子さんによる感動の対談集『母を葬る』
11月18日、新潮新書より発売された『母を葬る』は、女優の秋吉久美子さんと作家の下重暁子さんによる特別対談集です。二人の人生経験と、母との複雑な関係を深く掘り下げた内容となっています。
秋吉さんは、幼少期から過剰なほどの愛情を受けて育ちましたが、理想の娘像にはなれなかったという葛藤を語ります。一方、下重さんは、30年以上も母の夢を見たことがないという衝撃的な告白とともに、母との距離感や、自身の子供を持たない選択について赤裸々に語っています。
本書では、母への愛憎、そして未だに「母を葬る」ことができない理由が、繊細かつ力強く綴られています。二人の対談を通して、読者は「母」という存在、そして「家族」という名の呪縛について深く考えさせられます。
複雑な母娘関係と、それぞれの想いの軌跡
本書は、「まえがき」で秋吉さんが自身の母を語ることに対する戸惑いを、「あとがき」で下重さんが自身の子供を持たない選択に至った背景をそれぞれ語ることから始まります。
続く第一章「青春って見当違い」では、秋吉さんの女優としてのキャリアや、NHKアナウンサーを目指した時代、そして「寅さん」シリーズのマドンナ役を務めた経験などが語られています。華やかな芸能界の裏側や、人間関係の葛藤なども赤裸々に告白しています。
第二章「家庭内キャリアウーマン」では、秋吉さんの家庭生活や、母との関係性の変化が描かれています。過干渉な母との距離感、そして自己欺瞞や罪悪感といった複雑な感情が丁寧に表現されています。
第三章「落魄の人」は、秋吉さんの人生における苦悩や挫折、そして母との死別について描かれています。自身の弱さや、母への複雑な感情が、率直に語られています。
第四章「人生はひらり、ひらりと」では、秋吉さんが、母との死別を経て得た「受け入れる力」や人生観について語っています。穏やかな語り口の中に、人生の深みを感じさせます。
下重さんは、自身の子供を持たない選択について、母との関係性、そして人生観を深く絡めて語っています。また、人生における様々な経験や、自身の考え方を、独特の視点から考察しています。
「家族」という名の呪縛と、その先にあるもの
本書は、単なる母娘間の物語にとどまりません。「家族」という枠組みの中で生じる葛藤や、親子の間にある複雑な感情を、深く掘り下げた内容となっています。
過剰な愛情、理想と現実のギャップ、そして死別。これらを通して、読者は「家族」とは何か、「母」とは何かを改めて問いかけられます。
秋吉さんと下重さんの言葉は、現代社会における「家族」の形や、親子のあり方について考えるきっかけを与えてくれるでしょう。
本書は、母を亡くした方、複雑な家族関係に悩む方、そして自身の生き方に迷うすべての人にとって、共感と勇気を与えてくれる一冊です。
秋吉久美子さん、下重暁子さんの真摯な言葉が、あなたの心に深く響くことでしょう。