環境に優しい農業への新たな道
日本の農業界に注目される現象「トーキングプランツ」の研究が進む中、東京理科大学の有村源一郎教授を中心とした研究グループが注目すべき成果を上げました。植物同士がコミュニケーションを取り、近くにいる植物の防御機能を高めることで、害虫に対抗する能力を向上させる可能性が示されたのです。特にブッシュバジルの香り成分「オイゲノール」が、インゲンマメの防御遺伝子を活性化し、害虫の天敵を呼び寄せる効果を持つことが明らかになりました。
研究の具体的な成果
新たに実施された研究では、インゲンマメをブッシュバジルと共に栽培することで、以下の3つの効果が実証されました。具体的には、インゲンマメの防御遺伝子の活性化、ナミハダニに対する抵抗性の向上、さらにはハダニの天敵であるカブリダニを誘引する力です。
特にブッシュバジルが放つ香り成分オイゲノールは、インゲンマメのPR1遺伝子の発現を促進させ、この効果が最大で7日間持続することが確認されました。ナミハダニに対する実験では、ブッシュバジルと共に育てた結果、インゲンマメの葉におけるハダニの産卵数が有意に減少したことも報告されています。
ブッシュバジルとトーキングプランツ
トーキングプランツは、実際に植物間で情報がやり取りされていることを示す、魅力的な現象です。植物は害虫に食害されると、特定の揮発性物質(VOC)を放出し、近くの植物に対して警告し、防御遺伝子を活性化させるのです。この現象は、従来の農薬に依存せず害虫を防ぐ方法として、持続可能な農業技術の実現に寄与する可能性があります。
今後の展望
有村教授はこの研究を通じて、トーキングプランツのメカニズムに関する理解を深め、農業の現場で活用できる技術を確立することを目指しています。具体的には、さらなる研究を通じて、環境負荷を軽減しつつ効率的な害虫対策の実現が期待されています。環境への負荷を軽減し、持続可能な農業の実現に向けた一歩として、多くの研究者や農業従事者が注目しているのです。
どのように応用するのか?
現在、ブッシュバジルのような香草をコンパニオンプランツとして使う手法は、農業現場でも幅広く実践されています。トマトの近くにバジルを植えることで、トマトの生育を助けるだけでなく、害虫被害を減少させることが知られています。今後、今回の研究成果を基に開発される技術が、より多くの植物に適用されれば、農業の現場が一層持続可能な方向へと進むことが期待されます。
最後に
今回の研究成果は、2025年7月に国際学術雑誌「Journal of Agricultural and Food Chemistry」にて発表されました。ブッシュバジルの特性を利用する新たな農業技術の開発が進むことで、持続可能な農業の未来が明るくなることを願っています。