十勝産の乳酸菌を用いた新しいチーズ製造法が受賞
株式会社明治が開発した「十勝産乳酸菌を用いたパルメザンチーズ製造法」が、令和7年度全国発明表彰で発明賞を受賞しました。この発明は、十勝産生乳から採取した乳酸菌を活用し、伝統的な長期熟成チーズの風味を短期間で再現できるという革新的な技術です。
発明の背景と技術
この発明が特に注目されているのは、通常2年以上の熟成を要する長期熟成チーズですが、今回の技術を使用することで、わずか6ヶ月の熟成で豊かな風味を持つチーズが実現できる点です。使用される乳酸菌「Lactobacillus fermentum OLL203697株」は、十勝産生乳由来のもので、これまでにない食文化の多様化に寄与していると評価されています。
チーズ製造における発酵過程において、この乳酸菌が生成する香気成分「パイン様エステル」が、チーズに独特の深い香りをもたらします。この成分は、イタリアの伝統的なパルミジャーノ・レッジャーノにも見られ、十勝産のチーズが国際的に評価される要因ともなるでしょう。
発表内容の詳細
受賞した「十勝産乳酸菌を用いたパルメザンチーズ製造法」は、特許第6084162号に登録されています。発明者は、明治のチーズ事業部門や研究部門からなる多くの専門家によって成り立っています。この革新は、約10年間にわたり十勝産チーズの価値を向上させ、地域の振興にも貢献してきました。
一般的に、乳酸菌は殺菌された乳原料に添加して熟成されるため、「パイン様エステル」を製造することは難しいですが、明治の研究者たちは短期間の熟成でもこの成分を生成する乳酸菌を探し出しました。その結果、OLL203697株が最も適切であると判明し、現在の技術に至ったのです。
今後の展望
この発明は、チーズ製造業界において新たなスタンダードを生む可能性があります。短期間で高品質なチーズを生産することができるこの技術は、文化的な食習慣を変革し、消費者に新たな選択肢を提供するものと言えるでしょう。今後、十勝産の乳酪が国内外でますます評価されることが期待されます。
全国発明表彰について
全国発明表彰は、科学技術の進展に寄与することを目的に1904年に始まり、毎年優れた発明や発見に対してその功績を称えています。公益社団法人 発明協会が管理し、科学技術的に秀でた発明に対して贈られるこの栄誉は、明治のチーズ製造技術の進化を象徴するものとなりました。
この技術の受賞は、将来的な発展を示唆しており、さらなる食文化の進化を期待させる要素です。この成功が多くのチーズ製造業者や研究者に刺激となり、次なる革新へとつながることを期待しています。