根寄生雑草の脅威と新たな発見:オーキシンが成長を制御!
トウモロコシやソルガムなど、重要な作物に寄生し、深刻な農業被害をもたらす根寄生雑草。その被害額は世界で年間1兆円にも上ると言われています。中でも、日本でも広く生育しているヤセウツボは、将来的な農業被害の可能性が懸念されています。
根寄生雑草は、宿主となる植物の根から分泌されるストリゴラクトンという植物ホルモンを感知し、発芽します。そして、幼根と呼ばれる根に似た器官を伸長させて宿主植物にたどり着き、寄生を開始します。
明治大学などの研究グループは、この幼根の成長を制御する要因として、植物ホルモンの一種であるオーキシンに着目しました。これまでの研究で、アミノ酸の一種であるトリプトファンを投与すると、幼根の伸長が抑えられることを発見していました。トリプトファンはオーキシン(インドール-3-酢酸:IAA)の前駆体となる分子であることから、オーキシンの効果についても研究を進めました。その結果、オーキシンはトリプトファンよりも強力に幼根伸長を阻害することが明らかになりました。
さらに、様々なオーキシン関連物質を用いた実験を通して、オーキシンが根寄生雑草の幼根伸長を抑制し、宿主方向への屈性に重要な役割を果たしていることを突き止めました。興味深いことに、シロイヌナズナに対してはオーキシン活性をほとんど示さない5-アダマンチル-IAA (ada-IAA) は、ヤセウツボの幼根伸長を強力に阻害することが明らかになりました。一方で、ada-IAAはシロイヌナズナの主根の伸長は阻害しませんでした。
根寄生雑草防除への期待:新たなツール開発の可能性
この研究成果は、根寄生雑草の幼根伸長と宿主方向への屈性のメカニズム解明に大きく貢献します。将来的には、オーキシンやada-IAAなどの分子を基盤とした、根寄生雑草の選択的な防除技術の開発につながることが期待されます。
今後の展望
今後の研究では、オーキシンが根寄生雑草の幼根伸長を制御する詳細なメカニズムを解明していくことが重要です。また、ada-IAAなどの分子を改良し、根寄生雑草に対してより効果的で安全な防除剤を開発することが、今後の課題となります。
この研究は、農業被害の軽減に貢献するだけでなく、植物の成長と発達に関する基礎的な知見を深める上で重要な成果と言えます。