世界遺産委員会概説
2024年7月21日から31日の間、インドのニューデリーで行われたユネスコの第46回世界遺産委員会では、日本から推薦された『佐渡島の金山』が新たに登録され、世界遺産の総数は1,223件に達しました。会議では、新規登録の24件に加え、危機遺産リストに関する議論も活発に行われ、多くの国が参加する重要なイベントとなりました。今回の委員会の成果と重要なポイントを、NPO法人世界遺産アカデミーの主任研究員・宮澤光氏が解説します。
1. 世界遺産リストの新規追加
今回の委員会では、文化遺産19件、自然遺産4件、複合遺産1件が新たに追加されました。また、登録の範囲が拡大した遺産も2件ありますが、危機遺産リストの数は変わらず56件です。登録勧告の内容が討論された中で、特に『佐渡島の金山』が注目されました。
2. 『佐渡島の金山』の登録の経緯
『佐渡島の金山』は、韓国との強制労働問題が懸念され、登録審査も難航するのではと予想されていました。しかし、韓国政府との合意による事前の情報共有が功を奏し、議論もなくあっさりと登録が決まりました。この遺産は17世紀初頭から19世紀半ばにかけて、機械を使わずに独自の技術で金を採掘・精錬してきた点が評価されたのです。
3. 新たに登録された注目の遺産
委員会では、他にも注目の遺産がいくつか登録されました。特にパレスチナの『聖ヒラリオン修道院/テル・ウンム・アメル』は、緊急的登録を受けた遺産として際立っています。この遺産はイスラエルの攻撃にさらされており、その保護の重要性が訴えられました。また、南アフリカの『人権と自由、和解:ネルソン・マンデラの遺産』も新たに登録されました。
4. 危機遺産に関する議論
ウクライナの危機遺産についての議論も行われ、ロシアの侵攻がもたらした影響について深い洞察が求められました。危機遺産リストに登録することがどのように国際協力に繋がるのか、各国の立場から意見交換が行われました。危機遺産に関する認識は国によって異なり、今後の課題として残ります。
5. 次回の世界遺産委員会
次回、2025年の第47回世界遺産委員会はブルガリアにて開催予定です。この委員会でも新たな遺産の登録が議論され、国際的な交流と協力が期待されています。
世界遺産は文化と歴史に触れる貴重な場です。『佐渡島の金山』の登録は、日韓間の対話と和解の象徴となるかもしれません。さらなる理解を深め、多様な遺産を次世代に残していくことの重要性を感じます。