エマルションフロー技術によるレアアース供給の安定化に向けた取り組み

エマルションフロー技術が開くレアアースの未来

日本は、ハイテク産業に不可欠なレアメタルをほぼ全て輸入に頼っており、その安定供給は経済にとって重大な課題となっています。特に、レアメタルの供給先はカントリーリスクが高い国に偏在しているため、供給不安が日本経済に与える影響は無視できません。このような背景から、日本政府は国内のレアアース精錬事業への支援を強化する方針を打ち出し、安定供給確保に向けた取り組みが進められているのです。

その中でも、株式会社エマルションフローテクノロジーズ（EFT）は、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構が開発したエマルションフロー技術を活用し、レアメタルのリサイクル事業を展開しています。この技術は、従来の方法に比べて低コストで高効率、かつ高純度な元素分離を実現する革新的なものであり、資源の有効利用やリサイクル社会の実現に寄与することが期待されています。

エマルションフロー技術の革命

エマルションフローは、従来の溶媒抽出技術を進化させたもので、物質の分離を「混ぜる」「置く」「分離する」という3工程から、「送液」だけで全てを同時に行えるという特長があります。この革新により、生産能力は従来の10倍以上になり、ランニングコストも80%削減されています。また、密閉構造のため臭いがなく快適な作業環境を実現し、IoTによる自動化が容易であることから、人件費の削減にも貢献しています。

特に注目すべきは、「多段エマルションフロー」と呼ばれる新技術です。これは、従来比100倍の生産能力を持ち、99.99％以上の高純度でレアアース元素同士の相互分離を実現しています。これによって、都市鉱山と呼ばれる廃棄物からレアメタルを低コストで回収し、ハイテク産業に再利用する「水平リサイクル」が可能になるのです。

電気自動車時代のレアアース需要

現在、世界中でカーボンニュートラル社会を目指した動きが加速しており、ガソリン車から電気自動車への移行が進んでいます。そのため、高性能モーターに使用されるレアアースの確保は非常に重要です。EFTは、JOGMECとの共同研究を通じて、中重希土類元素を対象にしたエマルションフローによる相互分離の実証を行っています。

この共同研究は、今後さらに需要が高まることが予測されるレアアースの安定供給を確保し、国内のレアアース精錬事業を展開するための重要なステップです。