子どもアドボカシー支援事業の実施状況とその課題
NPO法人全国子どもアドボカシー協議会が行った最新の調査によると、全国の児童相談所設置自治体における「子どもの意見表明等支援事業」の実施状況が明らかになりました。調査に参加した自治体79のうち、77%にあたる47自治体がこの事業を実施していると報告しています。この結果から、約8割の地域で子どもアドボカシー事業が展開され、子どもの権利を尊重する取り組みが広がっていることがわかります。
一方で、その活動にはいくつかの課題が残されていることも指摘されています。特に「支援員の不足」や「予算関連」に関する問題が顕著で、昨年度の調査結果と重なる部分があります。さらに、関係機関との調整が難しいことや、離島への派遣時のさまざまな問題も指摘されています。
調査の背景と目的
この調査は、子どもアドボカシー事業がどのように実施されているのか、またその過程での具体的な課題について把握することを目的としています。全国子どもアドボカシー協議会は、子どもや若者の参画型社会を実現すべく、各地での子どもアドボカシー活動の推進に力を入れており、その拡大に向けた基盤作りを行っています。
子どもアドボカシー事業の取り組み
今年度も引き続き、子どもアドボカシー事業の導入が遅れている地域に向けて、社会的養護を受けている子どもたちが平等に意見を表明できる場を整えるために、支援員の養成講座や地域へのサポートを行っています。特に、意見表明等支援員を育成するプログラムを通じて、実施団体が効果的に事業を進められるよう支援しています。また、初心者向けの講座も開講され、広く受講者を募集しています。
アンケート調査の実施内容
調査対象となったのは、全国の児童相談所設置自治体79地域で、61地域からの回答を得ました。回収率は77.2%と高く、実施状況の評価は重要なデータとして位置づけられます。調査はオンラインで行われ、不明点については電話での確認が行われました。調査期間は2024年の10月2日から11月15日にかけて実施されました。
調査結果の概要
1. 事業の実施状況
実施中と回答した47自治体と、準備中の13自治体とを合わせると、全体の約8割が何らかの形でこの事業に関与していることがわかりました。多くの自治体が民間団体に業務を委託している実態が見られます。
2. 意見表明等支援員の属性
支援員は主に女性で構成されており、その多くが50代以上の年齢層に属しています。活動の人数は少数に留まる傾向があり、一部の団体では活動員が1〜10名と非常に限られた体制で運営されています。
3. 支援員の活動状況
意見表明等支援員の活動場所は、一時保護所や児童養護施設が多く、活動頻度は毎週から年1回まで様々で、地域によって大きな差があります。
4. 事業に関する課題
支援員の不足や予算の確保、各機関との連携が課題として挙げられており、特に新たな活動を展開するための体制が不十分であるとの声が多く上がっています。
5. 育成と報酬
支援員の研修状況については、半数以上の団体が事前研修を実施している一方で、育成制度が十分に整備されていない実態も明らかになりました。
6. 運営体制と連携
児童福祉審議会において意見表明を審議する権利擁護部会の設置率が高く、運営体制として支援員のサポート体制はやや不足気味であることが確認されました。
今後の展望
本調査から、活動対象施設の拡充と支援員確保、予算の増大が急務であることが浮き彫りになりました。そして、研修体制や各関連機関の連携を強化する必要があります。全国子どもアドボカシー協議会では、意見表明等支援員の育成を引き続き重視し、子ども・若者の声を聴くための環境を構築する取り組みを進めていく方針です。
組織概要
全国子どもアドボカシー協議会は、「子どもの声を大切にする社会」の実現を目指し、2022年に設立されました。本協議会は、子どもや若者の権利を保障し、彼らの声を真摯に受け止めることの重要性を強調しています。詳しい情報は、
こちらのウェブサイトからご覧いただけます。