生きた細胞での血管奇形治療薬探索の革新
杏林大学の研究者たちが共同で、血管奇形の治療薬を探索する新たなプラットフォームを開発しました。この名もなきプラットフォームは、細胞内の光を利用して血管のシグナルを測定し、治療薬の効果を検証するものです。この研究は、国際学術誌「Angiogenesis」に発表され、多くの期待が寄せられています。
研究の背景
血管奇形は、血管の形成や安定性に異常が生じることで発生します。その中でも特に静脈奇形は、TIE2遺伝子の変異が関与し、外科手術や硬化療法によって治療されることが一般的ですが、時にはこれらの治療法では解決できない事情もあります。特に、Blue Rubber Bleb Nevus Syndrome(BRBNS)では、多発性の血管病変が生じ、手術だけでは難しいが実態です。
研究成果の概要
研究チームは、血管の安定性に関与する受容体TIE2のシグナルを生きた細胞内で光として測定する新しいTIE2-GRB2-BRETプラットフォームを開発しました。この技術は、細胞内の反応を高精度で計測することができ、TIE2の生理的なリガンドへの応答を追跡することが可能になりました。特に、複数のTIE2変異による異常信号の評価や様々な薬剤の応答を調べることができる特長を持っています。
研究チームは、まずこのプラットフォームがTIE2の本来のリガンドであるアンジオポエチン1に反応することを確認しました。次に、BRBNSに関連するTIE2の変異によって引き起こされる異常なシグナルを生きた細胞内での光として定量化しました。この過程で、既に臨床で使われている薬剤が、変異TIE2のシグナルを抑制することが確認されました。
本研究の意義
この研究の重要な点は、TIE2のシグナルを「見える化」したことで、疾患原因変異の活性を定量的に評価できるようになったことです。今後は、既存の医薬品を対象にした大規模なスクリーニングが期待される一方で、BRBNSの新しい治療法の発見にも貢献できる可能性があると言われています。ただし、それらの薬剤が実際にBRBNSの治療薬となるかどうかは、さらなる実験や検証が必要です。
今後の展望
新たな薬剤の開発は困難であり、既存の医薬品を用いるドラッグリポジショニングが、特に希少疾患において重要な戦略となるでしょう。研究チームは、今後も新しい薬剤候補を探索し、希少血管奇形に対する新たな治療法の確立を目指して研究を進める予定です。
用語解説
- - TIE2: 血管内皮細胞に発現する受容体型チロシンキナーゼで、血管の安定性に寄与します。
- - BRET: 発光酵素と蛍光タンパク質の近接によるエネルギー移動を利用して、分子間の相互作用を光で検出する技術です。
- - BRBNS: 青色ゴムまり様母斑症候群として知られる病で、全身に多発性の静脈奇形を生じます。
- - ドラッグリポジショニング: 既存の薬剤を別の疾患への新たな用途に転用する手法です。
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