人は裏切られても協力を選ぶ?
立正大学の山本仁志教授と明治大学の後藤晶准教授が率いる研究チームが、生物学的なゲーム理論の観点から興味深い発見を行いました。彼らは「囚人のジレンマ実験」における人間の協力行動の予想外の側面を明らかにする研究を進め、2024年9月19日に学術誌『Scientific Reports』に発表されました。
研究の背景と目的
囚人のジレンマは、競争と協力の選択が結果に大きな影響を及ぼす代表的なゲーム理論のモデルです。従来の研究では、裏切りや脱落に対する人間の反応が主に取り上げられてきましたが、この研究では意外にも、裏切られた後でも協力を選ぶ行動パターンが見られることに焦点を当てています。実験では、交互ゲームと自発的参加ゲームという2つの異なる状況を設定しました。
実験方法
この研究は、オンライン実験を通して、さまざまなゲーム構造における人間の意思決定を検証しました。特に、同時意思決定と交互意思決定、自発的参加の選択肢があるかどうかなど、異なる条件下での行動が観察されました。これにより、理論的には裏切りに直面すると人が協力をやめると考えられていたのとは裏腹に、多くの参加者が協力を選択する傾向があることが明らかになりました。
研究結果の意義
山本教授はこの結果について、「私たちの発見は、人間がこれまでの推測よりも柔軟かつ寛容であることを示しており、その背景となる心理的要因をさらに探求すべきだ」とコメントしています。後藤准教授もまた、「人は過去の行動にある程度縛られつつも、状況によっては協力を選ぶ可能性があるという結果は、心理や社会的文脈が行動に与える影響を重視することの重要性を示している」と述べています。
今後の展望
今回の研究は、ゲーム理論のモデルを再考し、人間の行動の複雑さをよりよく反映するよう新たな理論の構築が必要であることを示唆しています。裏切りや協力に対する通念を覆すこの発見は、今後の心理学や社会科学における研究活動に広く影響を及ぼすことが期待されます。
参考文献
- - Yamamoto, H., & Goto, A. (2024). Behavioural strategies in simultaneous and alternating prisoner’s dilemma games with/without voluntary participation. Scientific Reports, 14(1), 21890. 詳細はこちら