金利上昇時の駆け込み需要が続く首都圏のマンション市場の現状
近年、金利の上昇が続く中、首都圏の住宅購入市場で異常ともいえる活発さが見られています。特に、東京を中心としたエリアでは、成約件数が増加しており、金利の上昇が逆に購買を促しているのです。この状況について探ってみましょう。
金利の影響と中古マンション市場
最近のLIFULL HOME‘Sによる「住宅ローンに関する意識調査」の結果、住宅購入を検討している層の多くが「金利が上がる前に買いたい」と考えていることがわかりました。この結果が示唆するのは、金利上昇が必ずしも購買意欲を抑制せず、むしろ一種の駆け込み需要を生じさせているということです。実際、首都圏の不動産市場では、このような観点から見ても、成約件数は増加の一途を辿っています。特に東京都心や便利な沿線地域では、早期に成約が決まる物件が次々と見られています。「金利がさらに上昇する前に買いたい」という心理が強く働いているようです。
首都圏周辺の変化
一方で、神奈川県、千葉県、埼玉県といった首都圏周辺では、市場の構造に変化が見られます。これまで好調だった築浅マンションの成約数が次第に減少し、築年数の古い中古マンションが人気を集めています。この変化は、マンション価格の高騰によって、一般の所得層が手に入れられる物件の選択肢が狭まっていることを示唆しています。近年の再開発や人気沿線エリアの需要により、新築物件の坪単価がかなりの水準に達しているため、多くの世帯が手を出しづらい状況になっています。
購入タイミングの重要性
このような状況では、住宅購入を考えている方にとって、タイミングが非常に重要です。金利上昇によって短期的な駆け込み需要が発生する一方で、購入可能な物件が減少しているため、検討を引き延ばすと選択肢がさらに限られるリスクがあります。特に人気エリアや駅近物件では、成約までの期間が非常に短く、条件に合致する物件を見逃すと、理想の価格や立地条件での購入が困難になる可能性があります。
たとえば、1000万円の住宅ローンを借りる場合、金利が0.5%上昇するだけでも月々の返済額は数千円から1万円ほど増加します。この差は長期的な返済において決して無視できないものです。よって金利がまだ低い今、購入を決断することのメリットは大きいと言えます。
購入する際のポイント
このように、金利上昇局面の中で駆け込み需要が生じている一方で、実際に購入可能な物件の数は限られています。市場の動向をしっかりと監視し、希望条件を明確にしておくことが肝心です。筆者は、住宅購入を考えている方々に対し、物件選びの際は慎重に行動することはもちろん、早期に購入を決めることを強く勧めます。タイミングを逃すと、理想のエリアや価格帯での購入が難しくなるだけでなく、将来的な金利負担も増大するかもしれないため、計画的かつ迅速な行動が求められる状況であると言えるでしょう。
金利動向
変動金利
2025年9月には、短期金利大きな変動は見られず、多くの銀行が金利を据え置いています。DH住宅ローン指数も0.862%と前年同月より上昇しています。今後、変動金利も上昇圧力が強まることが予想されています。
10年固定金利
10年固定金利は1.812%と上昇傾向にあり、ほとんどの金融機関が金利を引き上げています。
全期間固定金利
全期間固定金利は2.521%とわずかに下がりましたが、依然として高水準を維持しています。
このような金利状況を踏まえた上で、住宅購入を検討される方は、慎重に動向を見極めつつ、早めの行動が求められています。
筆者プロフィール
福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
私は早稲田大学理工学部を卒業後、大手不動産会社でマーケティング調査を行い、その後、建築設計事務所にて法務や労務を担当してきました。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査及び評価指標の研究・開発を行っており、他にも顧客企業の不動産事業に関するサポートを手掛けています。