2025年の上場企業倒産の衝撃 - オルツの民事再生申請
近年、上場企業の倒産件数が増加する傾向にあり、その背後にはコンプライアンス違反の影響が確実に存在しています。2025年、この流れを象徴する事件が発生しました。株式会社オルツは、東証グロースに上場してからわずか9カ月で民事再生を申請したのです。これは、コロナ禍以降4年連続で上場企業の倒産件数が1社であるという状況を受けた事件でもあります。
上場企業倒産の背景
帝国データバンクの調査によると、2025年12月29日現在で上場企業の倒産はオルツ一社に留まっています。このような事態は、過去の経済危機からの影響を受けつつも、近年の企業業績の好調さから大きな注目を集めました。リーマンショック以降、企業の倒産件数は次第に減少し、アベノミクスなどの政策による経済回復があったためです。しかし、コロナ禍の影響により、再び企業風土が厳しさを増しています。
オルツの成り立ちと倒産
オルツは、2014年に設立されて以来、高精度自動文字起こしソリューション「AI GIJIROKU」を開発・販売してきました。このサービスは、生成AIを活用し、音声認識と大規模言語モデルを駆使しており、2020年にリリース以来多くの企業に導入されていました。社内会議の要約や業界特有の専門用語の認識機能も強化され、累計100億円を超える資金を調達し約9000社に導入されていると報じられていました。
しかし、2024年10月に東証グロースに上場したものの、売上が抑制されていたことが明らかになり、2024年12月期には約60億5700万円の収入を計上したのにも関わらず、開発業務や人材投資により赤字決算に陥りました。
2025年4月には、いくつかの販売パートナーからの受注の中で、実際には実行されていない売上が過大計上されている可能性が確認され、調査が開始されました。さらに、同年6月には、循環取引による売上水増しが報じられ、監査当局の強制調査が行われます。結果、通報された数字の最大9割が架空の売上であることが特定され、状況はますます悪化しました。
民事再生法の適用申請と今後の対応
7月には、企業の財務状態が深刻であることが判明し、株価の低下と監視銘柄への指定も相まって、オルツは東京地裁へ民事再生法の適用を申請しました。それに伴い、負債は約16億636万円に達しています。このケースは、今後の法人におけるコンプライアンス遵守の重要性を強調しており、企業経営において信頼の確保がいかに重要であるかを示しています。
オルツの倒産は、企業が成長する中で急激な変化によって起こるリスクをも考慮した経営戦略を持つべきであることを教えてくれます。今後、この事件が未熟な経営の改善や業界全体の再構築への足がかりとなることを願っています。