2025年2月25日、アルテアエンジニアリング株式会社の東京オフィスにて、「金融機関は生成AIで成果を生み出せているのか」というテーマでラウンドテーブルが開かれました。このイベントには、社会経済システム専門の和泉潔教授が招待され、生成AIの導入について金融機関が抱える現実とその課題が徹底的に議論されました。
最初に、アルテアの内部調査に基づく金融機関での生成AI活用状況が報告されました。驚くべきことに、金融業界に従事する人々の54%は生成AIを「全く利用していない」と答え、その活用は事務作業に留まっています。さらに、生成AIをデータ分析に活用しているのはわずか8%しかおらず、その多くが文章の作成や要約にとどまっています。このような現状を受け、及川は「トレーディングの領域での活用が進んでいない」という見解を示しながら、リテール部門での活用が徐々に進んでいることを指摘しました。
和泉教授は、生成AIの利用がコスト削減や業務効率化だけでなく、新たな収益源を見つける可能性を秘めていると強調。この観点から、現役の金融業務にどのようにAIを組み込むかが鍵になるとの見解を示しました。また、調査結果に基づいたディスカッションでは、一般社員と役職者の間の意識のギャップも明らかになり、役職者は業務効率化に寄与していると回答していますが、一般社員の多くはその効果を実感しきれていない現状が確認されました。
続いて、生成AIの専門家支援に関する調査も行われました。役職者が「生成AIの精度を上げるサポート」を求める傾向が強い一方で、一般社員は「人材育成のための継続的なトレーニング」を最も重視していることがわかりました。この結果は、一般社員が自らのスキル向上を求めている一方で、役職者は生成AIの活用を深めたいという意向を反映しています。
一方、金融機関が生成AIを活用する上での障壁も浮き彫りになりました。特にデータガバナンスやセキュリティ面での課題が多く、専門的な解析が難しい環境も影響しています。また、国内の金融機関と海外との違いとしては、開発スピードやデータのオープン性が挙げられ、これらが生成AIの導入における競争力に直結する重要な要素だとされました。
加えて、講座の中ではアルテアが提供するRapidMinerプラットフォームを用いた研修内容も紹介され、実際に参加した学生からの評価が高いことも報告されました。最後には、生成AIを活用した各金融機関の取り組みについての未来図が描かれ、業務効率化の先にはさらなる収益化が待っているとの期待感が共有されました。
このように、生成AIの進化が金融機関において不可欠な要素となっている中、その実現に向けた取り組みが徐々に進んでいることが明らかになったイベントとなりました。